相続の開始

相続とは、自然人(法律用語で生身の人間のことをいいます。)の財産などの様々な権利・義務を、他の自然人が包括的に承継することです。

ここでご注意いただきたい点は、相続によって相続人が承継するものは、権利(土地、株式、現預金)だけではなく、義務(たとえば負債、借金など)も承継するというところです。

どのような場合に相続が開始するのか? 

「相続は、死亡によって開始する。」と民法に規定されていますが、法律上の「死亡」には、以下のような様態があります。

(1)被相続人の死亡
(2)失踪宣告
(3)認定死亡


(1)被相続人の死亡 

被相続人が病気や事故などにより死亡したときは、当然に相続が開始します。

「被相続人」:亡くなった方のことです。
「相 続 人」 :亡くなった方(被相続人)から遺産を相続する人のことです。


(2)失踪宣告 

失踪宣告には普通失踪と危難失踪の2種類があります。

普通失踪(不在者の生死が7年以上明らかでないとき)

ご家族が家を出たまま帰宅することなく、生存しているかどうかも分からない状態が続いているケースです。

このような生死不明の状態が7年以上続いているような場合は、ご家族など利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告の審判を申し出ることにより、不在者が死亡したものとみなされる制度があります。

失踪宣告の審判が確定すると、失踪宣告を受けた不在者は、7年の失踪期間の満了のときに、死亡したものとみなされます。

したがって、このときに相続が開始され、失踪者に配偶者(夫や妻のことです)がいればその婚姻は解消されます。

危難失踪

 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者、その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないとき、利害関係人が失踪宣告の審判を申し出ることにより、不在者が死亡したものとみなされる制度です。

 危難失踪の場合では、失踪宣告を受けた不在者は、その危難が去ったときに死亡したものとみなされます。


(3)認定死亡 

水難、火災その他の事変によって死亡した者がある場合には、その取調べをした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければなりません。(戸籍法89条)

具体的には、船舶の遭難事故(水難)について海上保安庁が取調べをおこなった結果、死体の確認はできないが、死亡したと考えるに充分な状況がある場合、親族の願い出があれば、海上保安庁が死亡認定を行い、その旨を報告をします。

そして、死亡認定に基づいて戸籍に死亡の旨が記載されます。