株式会社の増資・募集株式の発行

増資・募集株式の発行

募集株式の発行(増資)をする場合の募集方法の種類、手続きの流れについてご説明いたしまします。

この記事をご覧になると、募集株式の募集の手続きの流れ、手続きを簡略化する方法についてわかります。


増資・募集株式の発行とは

株式会社の資本金を増やすことを「増資」と称することが多いですが、正確には、新株の発行をともなう資本金の増加のことを「募集株式の発行」といいます。

このページでは、募集株式の発行(増資)をする場合の募集方法の種類、手続きの流れについて解説します。

募集株式の発行の種類

募集株式の発行の方法は三種類あります。

新株を割り当てる相手により「株主割当」・「第三者割当」・「公募」の三種類の募集方法に分けられます

株主割当

株主割当とは、すべての株主に対して持株数に応じて株式の割当てを受ける権利を付与することです。

一部の株主に新しい株式を割り当てる場合は株主割当にはなりません。この場合は第三者割当となります。

第三者割当

第三者割当とは、株主割当以外の方法により、特定の第三者に株式を割り当てる場合をいいます。

この特定の第三者は株主あるいは株主でない者であっても構いません。

たとえ株主に新しい株式を割り当てる場合であっても、株主の全員ではなく特定の株主に割り当てる場合は第三者割当にあたります。

公募

公募とは、不特定多数の者に取得の申込を勧誘することです。世の中にたくさんいる出資者から広く出資を募集する方法です。

公募の方法による募集株式の発行のことを公募増資と呼ぶこともあります。

1.株主割当の場合の手続きの流れ

株主割当の場合の手続きの流れの項目は以下の4つになっております。

以下、個別に解説いたします。

1-1.募集事項の決定

募集事項とは、株式募集に当たって定めなければならない具体的な条件のことです。

具体的には次の5点を決定することになります。

株主割当特有の決定事項

株主割当の場合、上記の募集事項のほかに、以下の事項を定める必要があります。

・株主割当てを行う旨

・募集株式の引受の申込期日

資本金への組入れ額について

募集株式の発行により払い込まれた出資金は必ずしも、全額を資本金に組み込む必要はなく、払い込まれた額の2分の1までは資本金に組み込まず、資本準備金とすることも可能です。

増加した資本金の額をもとに、登記の際にかかる登録免許税を計算されますので(資本金増加額×0.7%。ただし最低額は3万円)、場合によっては、登録免許税を節約するために、実際に出資した額の一部(最低2分の1)だけを資本金に上乗せすることが考えられます。

募集事項の決定機関

募集事項を決定する会社の機関は、非公開会社(株式の譲渡制限規定のある会社)と公開会社(株式の譲渡制限規定がない会社)によって異なってきます。

非公開会社(株式の譲渡制限規定のある会社)の場合

原則として、募集事項を株主総会の決議で決定します。

例外として、株主総会の決議に基づき取締役会に募集事項の決定を委任することもできます。

この場合、株主総会で募集株式の発行決議をして、個別の募集事項は取締役会(取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致)で決定することになります。

ただし、募集事項の決定を取締役会に委任した結果、勝手にたくさんの株式を安い発行価格で新たに発行されると困ります。

そこで、株主総会では募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定める必要があります。

公開会社(株式の譲渡制限規定がない会社)の場合

取締役会の決議で募集事項を決定します。

決議事項として、募集事項のほかに、株主割当てを行う旨と募集株式の引受の申込期日を定める必要があります。

1-2.株主に対する失権予告付催告

株主割当の募集事項等を決定したときは、申込期日の2週間前までに、募集事項等を通知します。

1-3.募集株式の引受申し込み

募集株式の引き受けを申し込む株主は、会社が定めた申込期日までに引受申込書を会社に提出します。

この申込の期日までに申込みをしなかった株主は、募集株式の割当てを受ける権利を失うことになります。

株式引受人になる時期

募集株式の引受の申込期日までに申し込んだ株主のことを株式引受人といいます。

後述する会社と株主間で総株引受契約を締結する場合、総株引受契約を締結したときに株式引受人になります。

1-4.出資の払込み

株式引受人は、募集事項で定めた払込期日(又は払込期間)までに出資金を払い込まなければなりません。

金銭以外の財産を会社に給付する場合を現物出資といいます。

募集事項において現物出資に関する事項を決定している場合は、その決定した募集事項にしたがって金銭以外の財産を会社に給付します。

株式引受人は、払込期日(又は払込期間)に払い込むことにより株主になります。

総株引受契約を締結すると手続きを省略できる

会社と株式の引受人の全員との間で、募集株式の総株引受契約を締結する場合は、上記1-1から1-4の手続きのうち1-2.株主に対する失権予告付催告と1-3.募集株式の引受申し込みを省略することができます。

比較的小規模な株式会社でしたら、株主と総株引受契約を締結することによって増資の手続きを早く終わらせるケースが多いです。

1-5.変更登記の申請

募集株式の発行により新株を発行した場合には、払込期日又は払込期間の末日から2週間以内に変更登記をしなければなりません。
この登記すべき期間を経過してしまった場合でも登記申請は可能ですが、この場合、過料の制裁を受ける場合がありますので、登記すべき期間についてはご注意ください。

2.第三者割当の場合の手続きの流れ

第三者割当の場合の手続きの流れは以下のとおりです。

以下、項目を個別に解説いたします。

2-1.募集事項の決定

募集事項とは、株式募集に当たって定めなければならない具体的な条件のことです。

具体的には次の5点を決定することになります。

資本金への組入れ額について

募集株式の発行により払い込まれた出資金は必ずしも、全額を資本金に組み込む必要はなく、払い込まれた額の2分の1までは資本金に組み込まず、資本準備金とすることも可能です。

増加した資本金の額をもとに、登記の際にかかる登録免許税を計算されますので(資本金増加額×0.7%。ただし最低額は3万円)、場合によっては、登録免許税を節約するために、実際に出資した額の一部(最低2分の1)だけを資本金に上乗せすることが考えられます。

募集事項の決定機関

非公開会社(株式の譲渡制限規定のある会社)

原則として、募集事項の決定は株主総会決議によります。

例外として、株主総会の決議に基づき取締役会に募集事項の決定を委任することもできます。

この場合、株主総会で募集株式の発行決議をして、個別の募集事項は取締役会(取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致)で決定することになります。

ただし、募集事項の決定を取締役会に委任した結果、勝手にたくさんの株式を安い発行価格で新たに発行されると困ります。

そこで、株主総会では募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定める必要があります。

公開会社(株式の譲渡制限規定がない会社)

取締役会の決議により募集事項を決定することができます。

ただし、募集事項の払込金額が、募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合(有利発行)には、原則として株主総会の決議が必要になります。

2-2.株主に対する通知等

公開会社(株式の譲渡制限規定のない会社)は、取締役会の決議で募集事項を定めた場合には、払込期日(払込期間の初日)の2週間前までに、株主に対して募集事項の通知又は広告をして、既存の株主に募集株式の発行につき差止請求の機会を与えなければなりません。

2-3.株式の申込み

募集株式の引き受けを申し込む者は、会社に対して引き受けの申込み(引受申込書を提出)します。

2-4.株式の割当決議

会社は、申込者の中から募集株式の割当てをする者、及び割り当てる募集株式の数を定めなければなりません。

会社が公開会社であるか非公開会社であるかによって、割当決議の機関は異なります。

この割当てによって、申込者は割り当てられた募集株式の引受人となります。

会社と募集株式の引受人の全員が、総数引受契約を締結するときは、株式の申込み及び株式の割当決議の手続きは不要になります。

2-5.出資の払込み

募集株式の引受人は、募集事項で定めた払込期日(又は払込期間)に出資金を払い込まなければなりません。

現物出資の場合は、金銭以外の財産を会社に給付します。

株式引受人は、払込期日(又は払込期間)に払い込む(財産を給付する)ことにより株主になります。

総株引受契約を締結すると手続きを省略できる

なお、会社と株式の引受人の全員との間で、募集株式の総株引受契約を締結する場合は、上記2-1から2-5までの手続きのうち2-2から2-4までを省略することができます。

比較的小規模な株式会社でしたら、株式の引受人と間と総株引受契約を締結することによって増資の手続きを早く終わらせるケースが多いです。

第三者割当の場合は、最速1日で増資手続きを終わらせることができます。

2-6.変更登記の申請

募集株式の発行により新株を発行した場合には、払込期日又は払込期間の末日から2週間以内に変更登記をしなければなりません。
この登記すべき期間を経過してしまった場合でも登記申請は可能ですが、この場合、過料の制裁を受ける場合がありますので、登記すべき期間についてはご注意ください。

増資についてよくある質問

Q.会社への貸付金を出資金にすることはできるのか?

A.会社に対する貸付金を、現物出資の財産とすることによってできるケースは多いです。

会社の役員が会社に貸し付けたところ、その残高が残ったまま時間がたってしまった場合があると思います。この貸付金を会社から返済してもらう処理もできますが、それでは会社財産が減少しますので、ためらってしまうケースもあります。

そのような場合は、会社に対する貸付金を現物出資の財産として増資のために使う方法もあります。

Q.最短でどのくらいで手続きが終わるのか?

A. 会社と出資者との間で総株引受契約を締結する方法でしたら、最短1日から数日で増資のための社内手続きを終わらせることができます。

その後の登記申請から登記完了までは別途1〜2週間程度お時間をいただくことになります。

Q.司法書士に頼んだときの費用はどのくらいになるのか?

A.案件内容によってかかる費用は異なってきますので、お見積もりをご依頼ください。お見積もりは無料です。

会社の謄本(登記事項証明書)・今回増やす資本金の額・新たに出資する方の人数等の情報がありますと助かります。