相続分の譲渡とは


相続分の譲渡とは何?

相続分の譲渡とは、相続人が遺産分割前に自分の相続分を、他の共同相続人その他の第三者に譲渡することをいいます。

相続人が複数いる場合に、話し合いで取り分を決めるときには、通常は相続人全員で遺産分割の協議を行い、後日の証拠として遺産分割協議書を作成します。

しかし、相続人間で争いがあり全員の合意を得ることが困難な場合や、既に取り分が決まっているが特定の相続人とのトラブルを避けるために、他の相続人に相続分を有償又は無償で譲渡する場合などがあります。

ここでいう「相続分」とは、遺産全体に対する各共同相続人の包括的持分(法定相続の割合)と解されています。
相続人の包括的持分の一部または全部を譲渡することはできますが、包括的持分を構成する個別財産(たとえば、不動産・現預金・株式)の一部を譲るようなことはできないものとされています。


相続分の譲渡の方法 

相続分の譲渡は、遺産分割の前に行なわなければなりません。

相続分の譲渡は、相続分の全部についてすることができますし、一部についてのみ譲渡することもできます。

ただし、相続によって取得した「特定不動産の持分」を譲渡することは、単に持分権の譲渡であるため、民法905条の相続分の譲渡には該当しないといわれています。

相続分を譲渡する相手は、他の共同相続人でも構いませんし、その他の第三者でも構いません。

譲渡は有償(対価をもらって譲渡)でも無償(対価をもらわずに譲渡)でも構いません。

相続分の譲渡の方式について、特に規定はなく口頭でも書面でもできますが、後日の紛争を避けるために書面を作成することが望まれます。

登記手続上は、相続分譲渡証明書が必要になります。


相続分の譲渡と遺産分割 

相続分の譲渡を、他の相続人に対して行った場合には、譲渡した分だけその相続人の相続分の割合が増加します。

一方、譲渡した相続人の相続分は全部譲渡の場合は消滅しますし、一部譲渡の場合は譲渡した分だけ減少します。
全部譲渡した相続人は相続分がなくなるため、遺産分割協議に参加することはできません。

同一順位の共同相続人の間で相続分が譲渡された場合は、譲渡後の共有持分の割合により、直接、相続による移転登記をすることができます。

相続分の譲渡が、他の共同相続人以外の第三者に対して行われた場合は、その後遺産分割の協議を行う際、第三者である譲受人も遺産分割協議に参加することになります。

登記手続き上の注意点は、被相続人(亡くなった方)から、共同相続人以外の第三者への直接の移転登記をすることは認められておらず、いったん共同相続人による相続登記を完了させ、その後、相続分の譲渡人から、譲受人への所有権(あるいは共有持分)の移転登記をすることになります。


相続分の譲渡が行われた場合の登記必要書類 

相続分の譲渡が行われた場合には、通常の相続登記の必要書類以外に、「相続分譲渡証明書」を作成して、譲渡人の印鑑証明書とともに登記申請のときに添付します。