農地の特定遺贈(とくていいぞう)に関する新しい通達など

司法書士ブログ

今回はちょっとお堅い話題を。

相続登記に関してのことですが、当事務所でもお受けした相続案件で、相続財産の中に農地が含まれている場合があります。

通常、農地を売買するときには、農地法の規定により農業委員会(または都道府県知事)から許可を得なければ、その売買に基づく所有権の移転登記をすることができません。

一方、相続によって農地の所有権が移転する場合には、農地法の許可を得ることなく、相続登記をすることができます。

また、「遺産分割」や、「離婚にともなう財産分与」、「特別縁故者への財産分与」、「包括遺贈」、「遺留分減殺」、「共同相続人に対する相続分の譲渡」の場合でも、農地法の許可は不要とされています。
(「包括遺贈」とは、遺言によって遺産の全部又は一定割合を譲与することです。)

ただし上記のうち、「離婚にともなう財産分与」と、「特別縁故者への財産分与」については、当事者の協議だけでは許可不要とはならず、判決又は調停による財産分与の場合のみ許可が不要となります。

相続がらみの似たケースとして、「死因贈与」、「共同相続人以外の者に対する相続分の譲渡」がありますが、これらのケースはつまるところ契約に基づく権利移転ですから、一般の権利移動と同様に、農地法の許可を要するものとされています。
(「死因贈与」とは、贈与者の死亡によって効力を生じる、生前の財産の贈与契約のことです。)

これまで、「特定遺贈」(遺言によって遺産のうち特定の財産を譲与すること)の場合には、その受遺者(遺贈を受けた者)が共同相続人であるかそれ以外の者であるかを区別せずに、農地法の許可が必要であるとされてきました。

つい先日(平成24年12月14日)、法務省から出された通達により、「特定遺贈」であっても「相続人に対する遺贈」であれば、農地法の許可は不要であるという見解が示されましたので、従前のとおり包括遺贈はもちろんのこと、相続人に対する特定遺贈の場合も、農地法の許可を得ることなく、農地の所有権移転の登記をすることができるようになりました。

今回はたくさん専門用語を使ってしまいましたが、どうぞご容赦ください。

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