本店移転登記のあれこれ【これ見ればほぼ大丈夫】
(この記事は、当ブログの過去の記事をリライトして再度掲載したものです。)
本店移転(会社のお引越し)をしたときは、会社の本店移転登記をする必要があります。
当事務所では、本店移転の登記は、役員の変更登記に次ぐ件数がございまして、いろんなご質問をお客様からいただく事がございます。
そんなわけで、今回は、本店移転登記にまつわる色々な論点を書いてみたいと思います。
その1・会社が本店移転するとき、本店住所地の表記をどう決めるのか。
会社の引っ越しをするので本店移転の登記をしてほしい、というご依頼をお受けすることが当事務所でもかなりあります。
本店移転をするときに、会社の登記事項のうち「本店」のところを、移転先の住所地に書き換えることになりますが、そのときお客様にお伺いする事項の一つに「本店の移転先の住所地」があります。
この移転先の住所地は、例えば東京23区内でしたら通常は「東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号」というふうになります。
ところで、たまにあるケースですが、移転先の住所地の市区町村が住居表示を実施していない地域があります。
たとえ東京23区内でも、住居表示を実施していない地域は結構ありますし、横浜市なんかも実施していない地域がかなり多いように感じられます。
その場合には「〇〇町〇丁目〇番地〇」、あるいは「丁目」の記載もない「〇〇町〇番地〇」という表示になる場合もありますので、移転先の住所地の表示方法に合わせて、適宜調整することになります。
住居表示を実施している地域かどうかは、だいたいは市区町村のホームページに掲載されていますのでそれを見たり、当該ホームページを見てもよくわからないときは役所に直接電話して聞いたりします。
もう一つの論点ですが、丁目・番地といった住所地以外に建物名があれば、会社の登記では住所地と一緒に建物名もあわせて記載することができます。
例えば「□□ビル」「□□ビルディング」「□□ヒルズ□□タワー」などのようなものです。
さらにもう一つ、建物名に加えて建物内の〇階や、部屋番号を入れて登記することも可能です。
例:「□□ビル7階」「□□ビル701号室」
その1・まとめ
というわけで、住所地以外の建物名や所在する階層・号室について、本店として記載するかどうかは、お客様のご都合やお好みに任されていますので、宜しくお願いいたします。
その2・本店移転を決定する機関
会社の本店移転をするにしても、その移転を決定するのは、そもそも誰だろうか(?)というお話です。
普通、会社の引っ越しを決めるのは社長だろ!!というご意見もあるかもしれませんが、本店移転を決定する機関は法律に定められていますので、社長の一存だけでは必ずしも決められない場合もあります。
チェックポイントは以下のとおりです。
会社の定款規定中、本店の所在地として、
① 最小行政区画まで記載されているのか、
② 具体的所在地まで記載されているのか、
この違いによって、本店移転を決定する会社の機関が異なってきます。
①最小行政区画まで記載している場合
① 最小行政区画まで記載している定款規定の例
(本店の所在地)
第〇条 当会社は、本店を東京都千代田区に置く。
このケースで、現在の本店所在地と同一市区町村内の本店移転でしたら、取締役会の決議で本店移転先を決めることができます。(取締開会制度を置いていない株式会社は、取締役の過半数の一致で決めます。以下同じ)
もちろん、他の市区町村に移転する場合(例:千代田区→新宿区)には、定款の記載を変更(定款変更)しなければなりませんので、株主総会の決議で本店移転先を決めることになります。
②具体的所在地まで記載している場合
② 具体的所在地まで記載している定款規定の例
(本店の所在地)
第〇条 当会社は、本店を東京都千代田区○○町○丁目○番○号に置く。
この場合、少しでも異なる住所地に移転すると、定款の記載を変更(定款変更)しなければなりません。
この場合には株主総会を開催して、本店移転先を決議することになります。
①②のケースに共通する事項
本店移転にともなって定款変更が必要になる場合には、以下の決め方でOKです。
- 株主総会の決議によって最小行政区画(例:東京都新宿区)までを、変更後の定款に規定する。
- 残りの具体的所在地(〇〇町〇丁目〇番〇号)については、取締役会の決議で定める。
将来ふたたび本店を移転することもあるかもしれません。
変更後の定款には最小行政区画までだけ定めて、具体的所在地は取締役会で決めておけば、次回の移転先がもし同一の市区町村内でしたら、わざわざ株主総会を開催して定款変更の決議をする必要はなくなります。
本店移転をされる会社様はどうかご検討下さいませ。
その3・本店の移転日はいつになるのか
ところで、お客様によく尋ねられることですが、本店の移転日はいったいいつになるのか?という論点について引き続き書いてみます。
まず原則は、本店の移転日とは、現実に本店が移転した日になりますので、会社の本店が引っ越しして移転先で営業を開始する日が移転日ということになります。
会社を移転したとき、たいていの企業は会社移転のご挨拶状を取引先に出されると思います。
通常でしたら、そのご挨拶状に会社の移転先での営業開始日を記載しますので、その日をもって本店の移転日とするのが自然だと思います。
ところで、引っ越しをすれば当然に本店移転の登記を申請できるようになるわけではなく、株主総会や取締役会等の決定機関で移転先の住所地・移転日について、決議する必要がございます。
移転に関する決議のタイミングですが、現実に本店を移転する日より前に、具体的な移転日を決定機関が決議するのが通常です。
もし決議をする時点で、具体的な移転日が決まっていないようでしたら、決議では移転時期を概括的に定めておいて(例:〇月〇日頃に移転する)、現実に移転した日がその決議の範囲内であれば、本店移転の登記は可能であるとされています。
上記とは逆のパターンで、現実の移転が決議日に先行するケースですが、現実に本店を移転した後で、決定機関による移転決議がされた場合、本店移転の日はどうなってしまうのかといえば、移転日は移転決議の日になるとされています。
したがって、現実に本店を移転する日と、登記簿上の本店移転日を一致させたい会社さんは、移転の決議は前もってしておいた方が無難だということになります。
それから、本店移転の登記申請日より未来の日付を本店移転日として登記申請することはできませんのでご注意ください。
登記のご依頼主様から、「今度、〇月〇日に本店移転するから、先に登記申請しておいてね。」という内容のご依頼をいただいても、将来の日付で登記することはできませんので、その点はどうかご容赦願います。
その4・本店移転と役員変更など他の登記をまとめて申請する場合
今回の記事もようやくこれで最後です。
本店移転と他の登記を同時申請する場合についてもお話をしたいと思います。
会社が本店移転するとき、同時に役員の構成や事業内容についても少し入れ替えて、新所在地でスタートする会社さんも多いです。
もちろん、このような合わせ技はほとんどのケースでできます。OKです。
当事務所がお受けするケースでも、「本店移転+商号変更」、「本店移転+目的変更」、「本店移転+役員変更」というふうに、本店移転とあわせて他の登記を申請することが多々ございます。
これは会社さんのご事情に応じて様々な組み合わせになりますので、どうぞご遠慮なさらずに色々と司法書士にご相談ください。
本店移転登記の費用面になりますが、登記を申請するときには登録免許税という税金(国税です)を納めることになります。
本店移転の場合、その税額は3万円(同一法務局管轄内での本店移転)または6万円(他の法務局管轄への本店移転)となっています。
本店移転以外の登記を一緒に申請するときには、役員変更(1万円又は3万円)、目的変更(3万円)というふうに、追加する登記の内容に応じて税額が加算されますのでご留意ください。