会社の定款を作り直すときのコツを解説【設立時の取締役】【有限会社】

ファイルをバンドル中

「会社の定款を作り直すとき、取締役とか発起人の名前は消してもいいのか?定款を紛失してしまったので再作成したい。有限会社の定款を作り直したい。」

この記事の筆者について

こんにちは、諌山(いさやま)です。

2009年に司法書士として活動を開始してから早くも10年以上経ちました。

会社の登記は日常的に取り扱っていますので、定款の作り直しもたくさん経験しています。

この記事の概要

この記事は、「会社の定款変更の手続きと、定款を作り直す方法を登記の専門家が解説します」の続編となっています。

よろしければ、前回の記事もご覧ください。

今回の記事では、つぎのポイントを解説いたします。

設立時の取締役や発起人は消してしまってもいいのか?

株式会社の定款の見直しをするときに、「設立時の取締役や発起人」の記載を消すことはできます。

定款の終わりのほうにある「附則」に書いてあることが多いですね。

このようなケースです。↓

定款附則の例

会社を設立したときの取締役、発起人の定めになりますので、今となっては意味を持ちません。

ただし、削除するときには条件があります。

もういらない定款の規定であっても、それを削除することは定款変更になりますので、株式会社でしたら株主総会の特別決議が必要になります。

手順としては次のとおりになります。

(1)定款規定を削除する株主総会の決議
         ↓
(2)実際の定款から規定を削除する

小規模の会社で、株主が創業者である社長お一人の場合や、複数でも2~3人くらいでしたら、すぐに株主総会を開催して決議してしまえば良いので、それほど難しくないはずです。

「えー、株主が何人もいるし、株主総会を開くのが面倒くさいなあ・・・。」

そうですね、そんなケースもありますよね。

それでしたら、削除せずにそのまま残しても大丈夫です。

定款に書いてあるのは、あくまでも設立したときの役員の氏名に過ぎませんので、現在の役員のメンバーとは違っていても、特に問題はありません。

どうしても定款から設立当初の役員とか発起人の氏名を消したいのでしたら、株主総会で定款を変更する決議をしておきましょう。

どのような株主総会の決議が必要になるのか、気になる方はこちらの記事もご覧ください。↓

関連記事:会社の定款変更の手続きと、定款を作り直す方法を登記の専門家が解説します

定款をまるごと作り直す時の手順を教えて

株式会社の定款の一部変更ではなく「まるごと作り直した」ときは、作り直した定款の文案について、株主総会で承認すれば良いです。

プロセスを少し分けて書くと下記のようになります。

(1)作り直す定款の文案の作成
        ↓
(2)株主総会で「まるごと作り直した定款」を承認
        ↓
(3)作り直した後の定款を保存

作り直した定款は、Wordファイルのようなデータで保管することも可能です。
いまは電磁的記録として保管しても構わないことになっています。

役所に提出する場合など、必要になったときに紙で打ち出せばOKです。

有限会社の定款の再作成はどうやってするのか?

現存する有限会社は、すでに設立してから10年以上経っていますので、
(1)定款の内容を現代化したい場合もありますし、
(2)定款が行方不明になってしまい全部作り直しする場合もあります。

2つのケース別に述べてみます。

(1)有限会社の定款を現代化したい場合

有限会社を設立したときの定款は残っているけど、内容が古めかしいことから現代化したいときは、小規模な株式会社の定款のひな形を参考にして、現代化することをおすすめします。

ただし、有限会社の場合は役員には任期はありませんし、取締役会のような会議体は置くことができなかったりします。

こういった有限会社に特有の論点がありますので、正しく現代化するのはわりと骨が折れたりします。

そこで、参考になりそうな事例を探したところありましたので、ご紹介します。

「有限会社っぽさ」を残しつつ定款を現代化した例になります。↓

有限会社の定款ひな形1
有限会社の定款ひな形2

ご参考になりましたら幸いです。

(2)有限会社の定款が行方不明だから全部作り直したい場合

実は、会社を設立したときの定款は公証役場にも保管されています。

ただし、保存期間は20年間となっていますので、社歴が長い有限会社だともう残っていない可能性はあります。

気になる方は、定款を作ってもらった公証役場に電話して聞いてみましょう。

もちろん、全然手元に定款がなくても一から作り直しはできますので大丈夫です。

前の項「(1)有限会社の定款を現代化したい場合」でご紹介している定款を参考にしながら、作り直せばいいのです。

「まるごと作り直して大丈夫なのか!?」という心配をされる方がいらっしゃいますが、大丈夫です。

無いものは無いのですから、再作成してしまいましょう。

有限会社の定款変更も株主総会の決議が必要です

有限会社でも定款変更をするときは、株主総会の特別決議が必要になります。

なにも決議しないまま定款だけ作り直すことは、いちおう法律上はできないことになってますので、ご留意ください。

株主が複数いる会社でしたら、株主のみなさんからあらかじめ了承を取っておくことが、コンプラ経営的には大切なプロセスになります。

有限会社は、法律上「特例有限会社」と呼ばれています。(ウンチクです)

有限会社は平成18年に会社法が施行されたことで、従来の有限会社は「株式会社とみなされる」存在になりました。

法律上は株式会社の一部とされているのです。

ただし、「特例」として、従来の有限会社が持っていた特徴(役員の任期の制限なし。毎年の決算公告は不要など)は、法律によって現在も認められているのです。

そこで、会社法が施行された後も存続している有限会社は、法律上「特例有限会社」と呼ばれております。

ちなみに会社法の施行によって、有限会社法が廃止されたことから、新たに有限会社を設立することはできなくなりました。

かわりに「合同会社」という簡素化された会社形態が用意されています。

まとめ

最後までお読みいただきましてありがとうございます。

関連記事
会社の定款変更の手続きと、定款を作り直す方法を登記の専門家が解説します
司法書士の平均年収と本音を語ります【一攫千金ではなく地道に】
サラリーマンが副業として司法書士はできるのか?

RELATED