会社住所を変更した場合の登記【必要書類と費用を徹底ガイド】
「会社の住所を変更すると、どんな登記が必要になるのか?いくら費用がかかるのか?いつまでにしなければならないのか?」
この記事の筆者
こんにちは、司法書士の諌山(いさやま)です。
2009年に司法書士として登録してから10年以上、登記の仕事を毎日やっています。
今回は、会社登記の中でも株式会社を中心に「住所変更」にまつわるお話をしていきたいと思います。
この記事の概要
- 会社が住所移転したときは登記が必要です
- 代表取締役の住所移転の登記
- 支店の住所移転の登記
- 不動産の所有者の住所変更
- 抵当権の債務者の住所変更の登記
- まとめ
会社が住所移転したときは登記が必要です
会社が他の住所に移転したときは、会社の住所を移転する登記をする必要があります。(本店移転の登記)
会社の本店所在地は登記されていますので、本店を移転したときは、法令にしたがって本店移転登記を申請することになります。
↓会社の登記簿謄本(履歴事項証明書)の例
会社の定款を確認する
本店移転をするために、会社の定款を変更する必要がある場合、株主総会を開催して定款変更の決議をすることになります。
会社の定款の例
定款変更をするかどうかの見分け方
定款の規定を変更しなければいけないのか、変えなくても良いのか、その判断は定款の条項の中の「本店の所在地」の書き方によって変わってきます。
会社の定款を確認しますと「本店の所在地」という規定があります。
本店の所在地として、市区町村までの範囲で定めている場合、同じ市区町村内での会社住所の移転でしたら、株主総会の決議は不要です。
定款で定められている市区町村から他の市区町村への移転になるときは、株主総会で定款変更をする決議が必要になります。
もうひとつ、定款変更をしなければいけないるケースがあります。
定款の「本店の所在地」の条項で、具体的な会社の所在場所まで定めている場合です。
市区町村までではなく、町名や住所の番地まで具体的に定款に書いてある場合、必ず定款変更を決議する必要があります。
会社の住所移転(本店移転)の登記必要書類
会社の定款の変更が必要である場合は、株主総会議事録と株主リストを作成して押印します。
- 株主総会議事録(定款変更を決議)
- 株主リスト(株主の住所・氏名・持株数・持株比率を記載した書類)
その他、定款変更の有無にかかわらず、必要になる書類は以下のとおりです。
- 取締役会議事録(移転先の具体的所在地と移転日を決定)
会社住所を移転(本店移転)する登記は、法務局という役所に登記申請書に議事録などの登記必要書類をそろえて申請します。
本店移転には登記費用が必要です
登記申請のときに「登録免許税」という税金を収入印紙で納めることになります。
登録免許税は3万円です。
ただし、他の法務局が管轄する住所地へ移転する場合は6万円です。
他の法務局が管轄する住所地への移転とは?
会社の所在地によって管轄する法務局が決まっています。
会社の住所の移転先が他の法務局の管轄になる場合、移転元+移転先の法務局に登録免許税をそれぞれ納付しますので合計6万円になるのです。
たとえば、東京法務局港出張所は東京都港区に所在する会社・法人を管轄しています。
港区にある会社を品川区に移転するケースで考えると、品川区を管轄する法務局は東京法務局品川出張所になります。
したがって法務局をまたぐ会社住所の移転になりますので、この場合は登記申請するときにかかる登録免許税は6万円になるということです。
会社・法人の登記の管轄は法務局のホームページで確認できます。
関連リンク
法務局ホームページ「管轄のご案内」
登記すべき期間が定められています
会社の住所変更(本店移転)したときは、その登記をしなければいけない期間が法律で決まっています。
登記すべき期間は、変更の事由が生じた日から2週間以内です。
もし、登記すべき期間の2週間を経過してしまったらどうなるのか?
法律で決まった登記すべき期間を経過しても登記申請はできます。
ただし、この期間経過後に登記申請したときは、法務局から裁判所が通知がいきまして、100万円以下の過料(実際は数万円くらいが大半)という行政罰が下される場合がありますのでご注意ください。
代表取締役の住所変更の登記
代表取締役の住所が移転したときは住所変更の登記が必要です。
会社の登記簿には役員も登記されていますが、代表取締役は氏名だけではなく住所も登記事項になっています。
代表取締役の住所がお引っ越しなどで移転したときは、住所の変更の登記申請をすることになります。
代表取締役の住所変更の必要書類
代表取締役の住所を変更する登記を申請するための必要書類はカンタンです。
- 登記申請書
- 収入印紙(登録免許税)
住民票はなくても大丈夫ですが、変更後の住所を正しい表記で登記するためには、住所移転後の住民票を用意したほうがいいです。
登記申請書の例はこんな感じです
代表取締役の住所変更の登記申請書は以下のようなものになります。
登記申請書の例↓
収入印紙を貼り付ける台紙の例↓
登記申請書に添付する別紙の例↓
登記申請書に、会社の本店や商号、代表取締役の新しい住所を打ち込みます。
A4サイズのコピー用紙にプリントアウトして、会社の法務局に届出ている印鑑(いわゆる会社実印)を押印します。
登記申請書にあなたの連絡先として電話番号も書いておいてください。
もし提出した書類に不備があれば法務局から連絡がくることもあります。
代表取締役の住所変更の登記費用
登録免許税として収入印紙を用意します。
登録免許税は1万円です。
ただし、資本金の額が1億円を超える会社は3万円。
収入印紙は、登記申請書とは別のA4サイズの紙に貼り付けます。
登記申請書と収入印紙を貼った台紙は、重ねてホチキス止めしましょう。
ページとページの間には割印も押します。
完成した登記申請書は、会社の所在地を管轄する法務局の窓口に提出するか、郵送でもオッケーです。
代表取締役の住所変更の登記すべき期間
代表取締役の住所変更にも登記すべき期間があります。
住所移転日から2週間以内となっています。
この期間から遅れて登記申請することはできますが、場合によっては過料の制裁が下される場合がありますので、登記申請はお早めにしましょう。
支店の住所移転の登記
会社が支店を登記している場合、支店の住所を移転したときはその登記をします。
本店(本社)以外に営業拠点を持っている会社は、その営業拠点を支店として登記している場合があります。
けっこうよくあるケースですが、支店の登記をしていることを忘れてしまい、あとで支店の移転があったのに、移転登記をせずに放置状態になっている場合があります。
会社が支店の登記をしているかどうかは、会社の登記簿を見ればわかります。
支店移転の登記手続き
会社の取締役会で、「支店の移転先」と「移転する日」を決定します。
登記申請書に取締役会議事録を添付して、本店所在地の法務局に登記申請します。
支店移転の登記の費用は?
支店移転登記の登録免許税は以下のとおりです。支店1か所の移転の場合です。
本店と、旧支店および新支店が同一の法務局の管轄の場合
登録免許税3万円
本店と旧支店が同一の法務局の管轄で、新支店が異なる法務局の管轄の場合
登録免許税
本店所在地分3万円+支店所在地分9,000円
本店、旧支店、新支店がいずれも別の法務局の管轄の場合
登録免許税
本店所在地分3万円+支店所在地分1万8,000円
支店移転の登記すべき期間
本店所在地と支店所在地が同一管轄の法務局の場合
変更の日(支店移転日)から2週間以内です。
本店と支店の所在地を管轄する法務局が異なる場合
本店所在地は2週間以内、支店所在地は3週間以内となっています。
不動産の所有者の住所変更
不動産(土地、建物、マンションなど)を持っている会社や個人が、住所変更したときは、所有者の住所変更の登記をすることをおすすめいたします。
不動産を所有している方は、不動産の登記簿に所有者として住所も登記されていますが、引っ越しなどで住所を変更したとしても、不動産の登記は自動的には変わらないからです。
不動産の所有権の登記をしたときの例
登記すべき期間はないけど、不都合はあります
会社の住所変更の登記と違って、不動産の登記は登記しなければならない期間は特に定められていません。
必要に応じてそのときに登記すれば良いように思えますが、住所変更の登記をしないまま放置していると不都合が出てくることがあります。
たとえば、よくある例として、不動産の売却をしたいときや、不動産を担保にして金融機関からお金を借りる場合です。
このような場合、不動産の所有者の住所変更を登記することが必須になります。
その一方で、「そのときになって登記をしたらいいのではないか?」という考えもあると思います。
ですが、不動産の売却や金融機関からの融資を受ける目前だと、自分で住所変更の登記を申請する時間的余裕はないケースが多いです。
このようなときは、買主や金融機関の要望にしたがって、先方が指定する司法書士に登記申請を依頼することになる可能性大です。つまり経費が余分にかかるということです。
ですから、住所変更をしたときは、お早めに不動産の所有者として住所変更の登記をしておいたほうが良いということになります。
不動産の所有者の住所変更の費用
不動産の所有者として登記されている方が、住所変更の登記を申請する場合の登録免許税は次のとおりです。
不動産1個につき1,000円。
土地1筆・建物1棟の場合は2,000円ということになります。
抵当権の債務者の住所変更の登記
不動産を担保にして銀行などの金融機関からお金を借りている会社や個人は、住所変更したときは「債務者」の変更登記も必要になってきます。
「債務者」とはお金を借りている会社・個人のことです。
お金を借りるときに担保に入れた不動産には、つぎのような登記がされているはずです。
上記の登記の例のように、抵当権の登記のなかに「債務者」としてお金を借りた会社や個人の住所氏名が登記されています。
登記上の住所と移転後の住所に不一致が生じてしまいますので、金融機関に住所変更を届け出たときに、債務者の住所変更の登記をするように要望されます。
この場合、金融機関から指定された司法書士に登記申請を依頼するか、特に指定がなければ、自分が知っている司法書士に頼むことになるケースが多いです。
債務者の住所変更の登記費用
抵当権の債務者の住所変更登記をするときの登録免許税は次のとおりです。
不動産1個につき1,000円。
土地1筆・建物1棟の場合は2,000円になります。
どの登記でもそうですが、司法書士に登記を依頼するときは報酬も別に発生します。
まとめ
会社が住所変更の登記をする代表例として、「会社の住所変更(本店移転)」、「代表取締役の住所変更」、「支店の移転」をご紹介しました。
会社の登記には登記すべき期間の制限がありますので、なるべくお早めに登記申請したほうが良いです。
住所変更をすると、「不動産」の所有者の登記にも影響が出てきます。
登記上の住所との不一致は、忘れる前に登記申請して直しておくことをオススメします。
今回も最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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