【2026年12月1日から】代表者の住所を非表示にできる制度が拡大します。合同会社・一般社団法人なども対象に
「会社の登記を調べると、社長の自宅の住所までわかってしまうの?」
ご自身で会社を設立したときに、このことを初めて知って驚いた方もいらっしゃるかもしれません。事業の情報は公開する必要があるとしても、自宅の住所が広く知られることには不安を感じますよね。
こうしたプライバシーへの配慮から、2024年10月に始まったのが、株式会社の代表取締役などの住所の一部を表示しない制度です。
今回、この制度に関する省令が改正され、2026年12月1日から、合同会社や一般社団法人などにも対象が広がります。
どのような改正なのか、利用する際には何に気をつければよいのか、順番にご紹介します。
この記事の概要
そもそも、住所の「非表示措置」とは?
会社や法人の登記には、名称や本店・事務所の所在地のほか、法律で定められた役員などの情報が記録されています。代表者の住所もその一つです。
登記事項証明書は、手数料を支払えば原則として誰でも取得できるため、代表者の住所も第三者が確認できる状態にあります。
住所の非表示措置は、一定の要件を満たして申し出ることで、登記事項証明書やインターネットの登記情報提供サービスなどに、住所の詳しい部分を表示しないようにする制度です。
例えば、住所が次のような場合を考えてみましょう。
| 通常の表示の例 | 非表示措置を利用した場合の表示の例 |
|---|---|
| 東京都千代田区○○一丁目2番3号 | 東京都千代田区 |
市区町村までの情報は残り、その先の町名・番地などが表示されなくなります!
東京都の特別区は区まで、政令指定都市も区までの表示です。
住所全体が消えるわけではありませんが、自宅の詳しい場所を広く公開することへの不安を軽くする仕組みです。
関連リンク:法務省「代表取締役等住所非表示措置について」
今回の改正で、利用できる会社・法人が広がります
今回の改正は、「商業登記規則等の一部を改正する省令(令和8年法務省令第51号)」によるものです。2026年10月30日に公布され、12月1日から施行されます。
これまでの制度は株式会社の代表取締役などが対象でしたが、改正後は、株式会社以外の会社やさまざまな法人などにも対象が広がります。
制度の名称も「代表者等住所非表示措置」となります。
新たに対象となる主な例は、次のとおりです。
| 会社・法人などの種類 | 新たに対象となる人の例 |
|---|---|
| 合同会社 | 代表社員 |
| 合名会社・合資会社 | 社員 |
| 特例有限会社(現在も「有限会社」として存続している会社) | 取締役・監査役など |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 代表理事など |
| NPO法人など、各種法人等登記規則が適用される法人 | 代表者など |
| 会社の支配人 | 登記されている支配人 |
ここでいう合同会社の「社員」は、一般的な従業員ではなく、会社に出資している構成員を意味します。
また、「支配人」は、会社から本店または支店に関する営業について幅広い権限を与えられ、そのことが登記されている人です。
このほかにも対象となる法人・組合などがあります。
ただし、外国会社の「日本における代表者」など、対象から除かれる立場もあるため、ご自身の法人の種類と登記上の役職を確認することが大切です。
関連リンク:改正省令本文(法務省・e-Gov掲載)
「合同会社だから利用できなかった」「一般社団法人の代表者にも同じ仕組みがほしかった」という方にとって、今回の改正は身近な変更といえそうです。
12月1日になれば、自動で非表示になる?
自動では切り替わりません。利用するには申出が必要です。
また、申出ができるタイミングにも条件があります。改正後も、原則として、対象となる人の住所が登記すべき事項に含まれる登記の申請とあわせて申し出る仕組みです。
例えば、会社の設立、代表者の就任、代表者の住所変更などが考えられます。株式会社では、住所が変わらない代表取締役の重任登記とあわせて申し出ることもできます。
一方、「登記を変更する予定はないけれど、住所の非表示だけを今すぐ申し込みたい」という単独の申出は、今回の改正では認められていません。法務省は、この点について引き続き検討するとしています。
関連リンク:法務省の意見募集結果・回答(意見34・35など)
すでに会社や法人を運営している方は、次の登記手続で利用できるか、早めに確認しておくと準備しやすくなります。
申出には、確認のための書類も必要です
申出では、法人の種類や対象者などに応じて、所定の書類を添付します。
上場会社以外の会社の代表者について初めて申し出る場合には、基本的に、次のような内容を確認する書類が必要です。
- 会社が登記上の本店所在地に実在していること
- 対象者の氏名と住所
- 会社の実質的支配者の本人特定事項
「実質的支配者」とは、議決権の保有状況などから、その会社の経営を実質的に支配している人のことです。
ただし、支配人について申し出る場合や、すでに非表示措置を利用している場合などには、必要書類の扱いが異なります。「どの法人でも同じ書類をそろえればよい」というわけではありません。
関連リンク:改正省令・商業登記規則第31条の3など
利用する前に知っておきたい、3つのポイント
① 過去に登記された住所まで、まとめて非表示になるわけではありません
特に気をつけたいのが、この点です。
今回の改正では、過去に登記された住所をさかのぼって非表示にする仕組みは導入されていません。
例えば、住所が変わらないまま代表取締役の重任登記とあわせて申し出ても、過去の任期に関する登記に同じ住所が残り、履歴事項証明書などから確認できる場合があります。
そのため、申出をすれば、これまで登記された住所もすべて見えなくなる、とは考えないようにしましょう。
ということで、代表者の住所を非表示にするタイミングは、以下の登記と一緒におこなうのがベターですね。
- 会社設立登記
- 代表者がお引越しをして住所変更登記をするとき
- 新任の代表者が就任するとき(ケースによります)
- 本店移転登記(他の法務局管轄に本店移転)
ただし法務省も、過去の住所を対象とすることは引き続き検討すると回答しています。
関連リンク:法務省の意見募集結果・回答(意見30・33)
② 引っ越しをしたら、住所変更の登記が必要です
非表示措置を利用していても、住所を正しく登記する義務は続きます。
例えば、同じ市区町村内で引っ越して、会社の登記事項証明書に表示される代表者の住所部分(例:東京都千代田区)が変わらない場合でも、住所変更の登記は必要です。
さらに、新しい住所も非表示にしたい場合には、住所変更の登記とあわせて改めて申し出る必要があります。
申出を忘れると、新しい住所には非表示措置が講じられないため、引っ越しの際はセットで確認しておきましょう。
関連リンク:法務省「登記義務・非表示措置の継続について」
③ 融資や不動産取引で、追加の書類を求められることがあります
非表示措置を利用すると、登記事項証明書では代表者の詳しい住所を証明できなくなります。
そのため、金融機関から融資を受けるときや、不動産取引を行うときなどに、別の確認書類を求められる場合があります。
非表示にすると融資を受けられなくなる、という意味ではありませんが、手続に影響する可能性はあります。
融資や大きな取引を控えている方は、申出の前に、金融機関や手続を担当する専門家へ確認しておくと安心です。
関連リンク:法務省民事局「株式会社の登記の申請をする方へのお知らせ」
自宅を会社の本店にしている場合は?
「自宅を本店にしているので、これで自宅の住所を隠せる」と考えた方も、少し注意が必要です。
この制度で非表示になるのは、代表者などの住所の一部です。会社の本店や法人の主たる事務所の所在地を非表示にする制度ではありません。
自宅と本店が同じ場所であれば、本店所在地から自宅の場所がわかる可能性は残ります。
利用を検討するときは、代表者の住所欄だけでなく、登記全体でどのような情報が公開されているかを確認しましょう。
次の登記手続に向けて、準備を始めておきましょう
今回の改正によって、これまで対象外だった合同会社や一般社団法人などでも、代表者のプライバシーを守るための選択肢が広がります。
利用を考えている方は、まず、ご自身が対象になるか、次にどのような登記を予定しているかを確認してみましょう。
そのうえで、過去の住所が残る可能性や、取引への影響も含めて検討することが大切です。
会社の設立や本店移転、代表者の変更、引っ越しなどを予定している方は、司法書士との登記の相談とあわせて、住所の非表示措置についても相談しておくと、必要なタイミングで手続を進めやすくなります。
※本記事は2026年11月6日時点の公表資料に基づき、同年12月1日施行の改正内容をご紹介しています。