司法書士と弁護士の違いを解説します【職域争いのお話を中心に】

司法書士と弁護士の違い

今回は、司法書士と弁護士というふたつの資格の違いについて解説します。

ところで、司法書士と弁護士の違いは私自身は分かっているつもりですが、もう一度おさらいのつもりでネットを中心に情報収集してみました。

そうしたら、面白いことに、ネットの検索上位に並んでいる一部の弁護士事務所や弁護士会のホームページで、司法書士のことを「軽くディスっている」ことがわかりました。

どんなことが書いてあるのかといえば、「司法書士は裁判業務のうちほんの一部しかできませんよ。」というものです。

一部の弁護士の司法書士に対する見解(例)

言われてみれば、まあその通りなのですが、司法書士のことを知らない人が見たら、司法書士は一部の裁判業務しかできない資格という勘違いをしてしまうかもしれません。

というのも、司法書士はほかにもできる業務がいくつもあるからです。

ということで、今回は、司法書士が一部の弁護士から煙たがられている理由と、司法書士と弁護士の違い、業務としてできることできないことについて解説します。

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このブログの筆者

司法書士事務所を開業して今年で10年経ちました。

日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことをブログで述べています。

この記事の概要

司法書士と弁護士の仕事がかぶっている件

仕事がかぶっている

この記事の冒頭で、「一部の弁護士が司法書士のことを煙たがっている」と言いましたが、これには理由はあります。

それは、司法書士が弁護士のライバルとして目立ってきたから、というところがポイントになります。

じゃあ、どのあたりがライバル関係になっているかといえば、それは「債務整理業務」です。

債務整理業務では完全にライバル関係になっている

「債務整理業務」について簡単に説明しますと、多額の借金を抱えて返済することが難しくなった人のために、法律の専門家が、法的な解決方法を使って依頼者をサポートする業務のことです。

具体的には、自己破産・個人再生・特定調停・過払金返還請求・任意整理といった手続きがあります。

これらの手続きは、テレビやラジオの宣伝で耳にしたことがある方もいると思います。

そうなんです。

司法書士事務所が債務整理業務の分野に入り込んできたので、これまで弁護士のひとり舞台だった債務整理・借金整理のお仕事をいくらか取られてしまったのです。

どれくらいのライバル関係になっているかといえば、ここに参考になりそうなデータがあります。(↓)

法テラスの無料相談のうち借金問題が約4割を占める

法テラスの法律相談援助の事件別内訳

このグラフは、「法テラス」という団体が公表している「法律相談援助の事件別内訳(の推移)」というデータです。

法テラスは、国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」とされています。今のところ全国に110箇所あります。

経済的に余裕がない人に限られますが、そのような方たちが法律上のトラブルにあった時に、法テラスは無料で法律相談を行っています。

その法律相談の事件別の内訳を表したものです。

2019年のデータになりますが、法テラスが受けた無料法律相談のうち、およそ38.4%が自己破産と多重債務の事件で占めています。

だいたい4割近くが、借金問題のご相談ということですね。

もちろん、このデータは法テラスという団体が受け付けた法律相談の内訳ですので、この割合が弁護士業界の全体に当てはまるわけではありません。

でも、一般市民が抱えている法律上のお悩みのうち、借金問題がどれくらいの割合を占めているのか、ある程度の目安となる数字だと思っています。

そこで、どうして司法書士が債務整理業務に参入できているかそのお話をします。

どうして司法書士が債務整理業務を扱えるのか?

司法書士はもともと「裁判所に提出する書類の作成」を依頼者のためにすることができます。

さらに、法務大臣の認定を受けた司法書士のことを「認定司法書士」と呼びますが、認定司法書士であれば、取り扱う業務をもう一つ増やすことができます。

認定司法書士は、民事事件のような「人と人との間で争いごとになっている事件」のうち、「簡易裁判所」という裁判所で取り扱う金額が低めの事件については、依頼者の代理人として相手方と交渉したり、簡易裁判所に依頼者に代わって出廷したりすることができます。

簡易裁判所というのは、民事事件でしたら140万円以下の事件を取り扱う裁判所です。

過払金の事件は140万円以下に収まることが多い

先ほど債務整理の具体的な手続きとして、自己破産とか過払金返還請求などをあげましたが、過払い金返還請求は簡易裁判所で扱っている金額140万円以下に当てはまることが多いため、これを業務としておこなう司法書士事務所がいくつも出てきたのです。

ちなみに過払い金返還請求とは何かと言いますと、貸金業者から昔、高金利でお金を借りていた人が、払いすぎた利息を返還してもらう手続きのことです。

現在は貸金業者がお金を貸し付けるときの金利は、最高でも年20%までとなっていますので、過払金は発生しませんが、昔は40%とか29%といった高金利でお金を貸していました。

その当時、高金利でお金を借りていた人は、支払った利息の一部は返還を求めることができるようになっているのです。

この過払い金返還請求の業務を取り扱う司法書士事務所が出てきたため、一部の弁護士が「司法書士の業務は140万円までの事件に限られますよ。これを超える金額は司法書士は取り扱うことができませんよ。」と注意喚起するようになったのです。

司法書士はもともと裁判所に提出する書類は作成できる

もう一度司法書士ができる裁判業務についてまとめてみたいと思います。

司法書士✖️弁護士
・裁判所に提出する書類の作成(簡裁・地裁・家裁など裁判所の管轄は問わない)

・認定司法書士は簡易裁判所の民事事件で依頼者の代理人として活動できる



・書類作成はもちろん、依頼者の代理人になれる(裁判所の管轄を問わない)

司法書士は「裁判所に提出する書類の作成業務」をすることができます。

書類作成業務だけでしたら、簡易裁判所でも地方裁判所でも、家庭裁判所でもどの裁判所に提出する書類であっても、司法書士は取扱業務とすることができます。

たとえば、自己破産や個人再生は地方裁判所という裁判所が事件を扱っています。

140万円を超える金額の過払い金返還請求も、地方裁判所で扱う事件です。

司法書士も裁判所の種類は関係なしに、そこに提出する書類の作成はできます。

そこで、140万円以下の過払金だけではなく、自己破産や個人再生、金額が大きい過払金の返還請求もまとめて取り扱う司法書士事務所が出てきたのです。

このトピックのまとめ

ということで、債務整理というくくりの中で話をしましたが、弁護士は裁判所の種類を問わず、事件の金額も関係なしに依頼者の代理人として活動できます。

司法書士は裁判所に提出する書類自体はできます。

そして、法務大臣の認定を受けた司法書士は簡易裁判所で扱う140万円以下の金額の民事事件については、依頼者の代理人として活動することができます。

もともと弁護士の独壇場であった債務整理業務に司法書士が参入してきたことから、一部の弁護士は司法書士をライバル視して煙たがっている、ということです。

ここまでは、司法書士と弁護士の仕事がかぶっている部分、重複している部分を中心にお話をしましたが、次のトピックでは、少し落ち着いた感じで、司法書士と弁護士の違いについてお話しをしたいと思います。

司法書士と弁護士のどこが違う?

どこが違う

このトピックでは、司法書士と弁護士のできること・できないことについてお話ししいたいと思います。

司法書士の業務

まずは司法書士からです。

司法書士のことをシンプルにイメージしますと「登記の専門家+α(アルファ)」といったところです。

司法書士が業務として取り扱っている「登記」は、土地や建物といった不動産の登記であったり、株式会社をはじめとする会社の登記のことです。

この不動産登記や会社登記は、国の機関の一つである法務局が事務を取り扱っています。

司法書士は、この法務局という役所に登記を申請する業務を、依頼者に代わって行うことができます。

そして「+α」は、何のことかといいますと、司法書士は「裁判所に提出する書類の作成業務もできる」ことを言います。

さらに司法書士は、特別研修という研修を受けて、法務大臣の認定を受けることができると、いわゆる「認定司法書士」になることができます。

認定司法書士は140万円以下の民事事件に限りますが、依頼者の代理人として相手型と交渉したり、簡易裁判所に依頼者の代わりに出廷して活動することができます。

ということは、例えば、50万円貸したけどお金が返ってこないとか、敷金30万円が帰ってこないとか、そのようなわりと金額が大きくない案件でしたら、司法書士に相談してみるといいかもしれません。

最近でしたら退職代行業務をやっている司法書士事務所もあります。ブラックな企業にお勤めのかたが、退職したいけど上司や社長に言い出しにくい場合があります。そんなときに退職手続きの代行をお願いできる司法書士事務所もあります。

そのほか、司法書士ができることはありますので、ざっくりとしていますが一覧表にしてみました。

司法書士全員

認定司法書士

登記や供託の手続き、裁判所に提出する書類作成などが司法書士の業務として認められています。

法務大臣の認定を受けた、いわゆる認定司法書士であれば、簡易裁判所の訴訟代理や140万円以下の民事の紛争に関する相談や和解などの業務もすることができます。

弁護士の業務

弁護士はなんといっても法律上のトラブル解決の専門家です。

なんらかの法律上のトラブルとか悩みを抱えた依頼者のために、法的なサービスを提供することで解決していく法律の専門家です。

法的なサービスというのは、たとえば民事事件でしたら、トラブルの相手型と交渉したり、裁判所に裁判を起こすなどのリーガルサービスのことです。

弁護士ができることは、弁護士法という法律に書いてあります。先ほどの司法書士の業務内容のように、たくさんのことは書いてありません。わりとシンプルです。

訴訟事件、つまり裁判に関する手続きはオールマイティーにできます。

人と人との争い事である民事事件だけではなく、刑事事件のような、犯罪の容疑がかけられているような方への弁護活動ができるのは、弁護士ならではのお仕事だと思います。

さらに法律事務一般もできるということで、例えば、法律相談も法律事務のひとつです。

ほかにも、トラブルの相手方と交渉して、和解や示談をしたり、契約書を作成したり、そのような法律事務を依頼者の代理人として行うことができます。

例えば、企業間の大きなトラブルのように、争いの元となっている金額が高額である場合なんかは、弁護士の独壇場と言えるのではないかと思います。

弁護士は弁理士・税理士の業務もできる!

ところで、弁護士法をよく見ますと、なんと「弁理士」とか「税理士」といった他の資格の業務もできることがはっきりと書いてあります。

ここで、弁理士と税理士についてものすごく簡単に解説しておきたいと思います。

いずれも独立した国家資格ですが、弁護士は弁理士と税理士の業務を行うことができるとされています。

弁護士は登記業務も取り扱うことができるとされている

あと、一般の方にはあまり知られていないのですが、弁護士は司法書士の業務である登記業務もできることになっています。

これは、20年以上前の過去のお話になります。

弁護士業界と司法書士業界の間で、「弁護士は登記業務をすることができるのか?」ということを裁判で争ったことがありました。

その裁判では、「登記業務は弁護士の法律事務に含まれる」という判決が出ましたので、その結果、弁護士は登記業務もできることとされています。

じゃあ、弁護士が登記のお仕事も日常的に取り扱っているかといえば、あまりそのような弁護士事務所は見たことがありません。

これは特許申請とか税務申告のお仕事もやっている弁護士事務所が、それほど多くないのと同じことです。

実際に、弁護士事務所に登記のお仕事の依頼が来たとしても、結局のところ、司法書士にそのお仕事を紹介して任せているケースがほとんどだと思います。

登記手続も実際にやってみると、あれこれ集める書類が多いですし、不動産登記も会社登記も基本的にミスが許されない手続きです。

ですから、裁判の専門家である弁護士は裁判のお仕事に専念することにして、登記の手続きは司法書士にお任せするケースが大半だと思います。

ということで、弁護士は訴訟業務とか法律事務一般を取扱い業務とすることができますので、ほぼ制限なく、オールマイティーに法律に関するお仕事ができる資格ということになります。

まとめ

今回は、司法書士と弁護士の違い というテーマで、

法務大臣の認定を受けた司法書士、いわゆる認定司法書士は、簡易裁判所に関する手続きを、依頼者の代理人としておこなうことができるようになっています。

その影響で、もともと弁護士の独壇場であった債務整理・借金整理の業務に、司法書士が進出してきましたので、一部の弁護士からライバルとして見られる存在になっています。

司法書士は不動産登記や会社登記といった登記手続きの専門家ですが、裁判所に提出する書類の作成もできます。
認定司法書士は140万円以下の民事の争いについては、依頼者の代理人として、交渉したり和解をしたり、簡易裁判所で裁判手続きをすることができます。

弁護士は、法律上のトラブル解決の専門家です。裁判手続きはもちろんですが、オールマイティーに法律事務を取り扱うことができます。さらに他の国家資格である弁理士とか税理士の業務を弁護士はすることができることになっています。
司法書士の登記業務も取り扱うことができるとされています。

というお話をいたしました。

この記事を最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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