司法書士試験の「免除制度」と「新司法書士試験」を詳しく解説します

司法書士試験の免除制度を徹底解説

今回は、司法書士試験の免除制度についてお話ししたいと思います。

現在のところの司法書士試験の免除制度には、2つの種類があります。

一つめは「試験自体が免除」になるものです。

ある一定年数を公務員として勤務していると、法務大臣の認定を受けて、司法書士となる資格をもらえるチャンスが出てくる制度があります。

二つめは「筆記試験だけが免除」となるものです。

ご存知の方が多いかもしれませんが、司法書士試験は「筆記試験」と「口述試験」の2段階の試験をいずれも通過できた人が、最終合格者になります。

でも筆記試験に合格した人が、何かの理由があってその年度の口述試験が不合格だったり、受験できなかった方は、次の年度の司法書士試験に限り筆記試験は免除されて、もう一回だけ口述試験を受けることができるというものです。

ですから、二つめの筆記試験だけが免除は、何か裏技があるという話ではありません。

ということで、今回の記事では最初のトピックで「一定年数を公務員として勤務していると、試験免除で司法書士となる資格を取得できる制度」について詳しく解説したいと思います。

あともうひとつ、一時話題になった「新司法書士試験で科目の一部免除が受けられるかも?」というウワサの真偽についても、あらためてお話ししたいと思います。

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この記事の筆者

司法書士事務所を開業して10年以上経ちました。

日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことをブログで述べています。

この記事の概要

司法書士試験が免除になる制度

司法書士試験が免除になる制度

司法書士試験が免除になる制度があります。

一定の年数を公務員として勤務することと、法務大臣の認定を受けること、この二つの要件を満たせば、司法書士となる資格を得られる制度があります。

最初に結論を言いますと、公務員を長年務めていた方が司法書士試験の免除という制度を利用して、司法書士になるケースはありますが、その人数はそれほど多くはありません。

はやく司法書士になりたいと思っている方は、司法書士試験の受験対策を立てて、普通に受験した方が早道だと思います。

司法書士試験の免除制度は、司法書士法という法律に書いてありますので、あるていど司法書士試験の学習をしたことがある人でしたら、すでに知っている方も多いかもしれません。

【ご参考】司法書士法第4条

第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有する。

 司法書士試験に合格した者

二 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であつて、法務大臣が前条(第3条「司法書士の業務」)第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの

司法書士資格の認定をもらえる公務員の種類は決まっている

試験免除の制度は「公務員として長年勤務してきた人が対象ですよ」ということを先ほどから言っていますが、どんな公務員でも良いというわけではありません。

公務員の種類が決まっています。

具体的に言いますと、次の6種類となっています。

公務員の種類通算の勤務年数
裁判所事務官▶︎10年以上
裁判所書記官▶︎10年以上
法務事務官▶︎10年以上
検察事務官▶︎10年以上
簡易裁判所判事▶︎5年以上
副検事▶︎5年以上

このうち、裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官の4種類は、通算して10年以上勤務した人である必要があります。

簡易裁判所判事、副検事の2種類は、5年以上です。

これらの6つの種類の公務員であることと、一定の年数を勤務していることが、一つめの要件となっています。

せっかくですから、これらの公務員についてどんなお仕事をしているのか、ものすごく簡単に説明します。

裁判所書記官と裁判所事務官は裁判所の職員

裁判所事務官と裁判所書記官は、いずれも裁判所で働く公務員です。

裁判所で働く公務員といえば「裁判官」のことが一番最初に頭に浮かぶかもしれませんが、その裁判官を補佐する仕事をしています。

最初は裁判所事務官からスタートして、内部試験に合格して研修を受けることで、裁判所書記官にステップアップできます。

法務事務官は登記官など法務省所属の公務員

法務事務官というのは、法務省(ほうむしょう)に所属する公務員のことです。

法務省が管轄するいろんな機関に法務事務官は所属してますが、その中でも一番わかりやすいのは法務局にいる「登記官」ですね。

検察事務官は検察庁の職員

検察事務官は、検察庁という刑事事件の捜査や裁判所への起訴などの仕事をしている役所がありますが、その検察庁で検察官の補佐役などをしている公務員です。

簡易裁判所判事は簡裁の裁判官

簡易裁判所判事は、略して「簡裁判事(かんさいはんじ)」と呼ぶことがあります。

簡易裁判所という比較的軽微な事件を取り扱う裁判所がありますが、そこの裁判官です。

簡裁判事は、裁判所書記官といった裁判所の職員が、内部試験を受けて簡裁判事になることが多いです。

副検事は主に簡易裁判所管轄の刑事事件を担当してます

副検事というのは、検察事務官などが内部試験を受けることでなることができます。

司法試験に合格して検察庁に採用された「検事」とは異なります。

検察庁の内部試験に受かることで、検察事務官などから副検事になるのです。

それで、検事と副検事は何が違うかと言いますと、副検事はおもに簡易裁判所で取り扱う刑事事件の捜査や裁判を担当します。

簡易裁判所で取り扱う刑事事件というのはどんなものか言えば、罰金刑で済むくらいの罪(たとえば窃盗とか暴行)のような比較的軽めの罪の事件になります。

つまり試験免除の対象である公務員は「裁判所・法務局・検察庁」に関係する人たちです

とういうわけで、司法書士になるチャンスがある公務員というのは、「裁判所・法務局・検察庁」などの法務省や裁判所の息がかかっている分野で働いている職員の一部ということになります。

そのような人たちが、一定の年数をかけて勤務すると司法書士になるチャンスが出てきます。

私は司法書士試験に合格して司法書士になりましたが、過去お会いした司法書士の中には、裁判所の職員だったけど法務大臣の資格認定を得て司法書士として活躍している方がいました。かなり年配の方でしたね。

でもそんなに簡単に司法書士になれるわけでもないようです

法務局や裁判所で10年勤めれば、すぐに司法書士になれるのかといえば、そんなに簡単なお話ではないようです。

でも、公務員に対する司法書士資格の認定をどのようにやっているのか、ほとんどブラックボックスになっています。

ということで、法務省の外に情報はほとんど出てきません。

ただし、ある程度のことはわかっていまして、どうやら司法書士資格認定試験というものは、やっているようです。

これは「司法書士の資格認定(しかくにんてい)に関する訓令」という、法務省が過去に出した通達みたいなものに書いてあります。

【ご参考】司法書士の資格認定に関する訓令

第1条 次に掲げる者は,法務大臣に対し,資格認定を求めることができる。

(1)裁判所事務官,裁判所書記官,法務事務官又は検察事務官として登記,供託若しくは訴訟の事務又はこれらの事務に準ずる法律的事務に従事した者であって,これらの事務に関し自己の責任において判断する地位に通算して10年以上あったもの

(2)簡易裁判所判事又は副検事としてその職務に従事した期間が通算して5年以上の者

第2条 司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有するかどうかの判定は,口述及び必要に応じ筆記の方法によって行う。

この訓令には、次のようなニュアンスで司法書士資格の認定の要件が書いてあります。

「司法書士の業務を行うのに必要な知識や能力の判定は、口述試験と、あと必要に応じて筆記試験の方法で行う」

ということで、一定の年数を務めた、法務局とか裁判所の職員に対して、無条件に司法書士資格を認定して与えているかといえば、そんなわけではないようです。

司法書士新規登録者のうち法務大臣認定者は5〜10%くらい

じゃあ、どれくらいの人数が司法書士資格を認定されているかといえば、その情報も公表されていませんのでよくわからないのですが、ある程度参考になりそうなデータはあります。

すっかり私の愛読書になっている「司法書士白書」という本があります。

その本の中に、「司法書士新規登録者数の推移とその内訳」というデータがありました。

このデータを見ますと、毎年の司法書士として新たに登録した人のうち、国家試験合格者と法務大臣認定者の内訳を確認することができます。

司法書士新規登録者の内訳

年度国家試験合格者法務大臣認定者(その割合%)
2016(平成28年)825人52人(約5.9%)
2017(平成29年)689人83人(約10.7%)
2018(平成30年)722人56人(約7.1%)
出所:司法書士白書

「国家試験合格者」というのは司法書士試験に合格して司法書士になった人数です。

「法務大臣認定者」というのは、法務局とか裁判所に勤めていた公務員が、司法書士資格の認定を受けて司法書士になった人数ということになります。

2016年度(平成28年)から2018年(平成30年度)といった、比較的最近の年度を見てみます。

そうすると、司法書士の新規登録者数のうち、割合としては、だいたい5%から10%くらいは、法務大臣認定であることがわかります。

少なくとも毎年数十人の方が、司法書士資格の認定を受けて、司法書士になっているということがわかると思います。

法務局職員・裁判所の書記官事務官の数に対する割合はどんな感じ?

これだけだと、公務員の数に対して法務大臣認定者が多いのか少ないのか?という疑問がわくかもしれませんので、さらに参考になりそうなデータをご紹介します。

法務局・裁判所の職員の定員に比べると法務大臣認定者はごく少数

法務局・裁判所の職員の定員

公務員の種類定員
法務局職員8,898人
裁判所書記官9,876人
裁判所事務官8,384人
上記定員の合計28,158人

法務省や裁判所のホームページをみると、法務局とか裁判所の職員の「定員」というデータがあります。

法務局の定員はおよそ8800人(8898人)、裁判所書記官がおよそ9800人(9876人)、裁判所事務官が9300人(9384人)の定員とされています。

合計すると2万8000人くらいになります。

例えば、この職員のうち毎年の退職者が数百人出るとしても、そのうち司法書士の資格認定をもらっている人数は、毎年数十名から100名くらいかな?と考えるとどうでしょうか。それほど多くはないなあ・・と思います。

ということで、司法書士資格の認定をもらえる方はとても少ないです。

早く司法書士になりたいと思っている方は、試験対策をして、ふつうに司法書士試験を受験したほうが早道だと思っています。

次のトピックでは、いっとき話題になった「新司法書士試験」で試験科目が一部免除されるかも?というウワサについてお話ししたいと思います。

新司法書士試験で科目一部免除はあるのか?

新司法書士試験で科目一部免除はあるのか

2020年のことになりますが、「新司法書士試験」というワードが、司法書士受験生の間で話題になりました。

SNSでもほんの一時期ですが話題になったワードですので、覚えている方もいるかもしれません。

新司法書士試験というワードの出どころは一冊の雑誌

新司法書士試験というワードの出どころは、日本司法書士会連合会(日司連)という司法書士の全国団体が出版している「THINK(シンク)」という雑誌です。

司法書士事務所に毎年のように送られてくる雑誌です。

雑誌「THINK」

THINK(シンク)という雑誌には、司法書士に関係する研究論文とか研究発表が載っています。割と文字がぎっしり詰まっていまして、かなり読み応えがある雑誌となっています。

2020年に発行されたTHINKに「司法書士養成制度検討会」の「最終報告書」という文章が載っていました。

司法書士養成制度検討会最終報告書のタイトル

この検討会のメンバーには、法科大学院の教授とか弁護士、司法書士が名前を連ねています。 

この最終報告書を見ますと、新しい司法書士の養成制度について、3つの提言が載っています。

最終報告書【3つの提言】

  1. 新司法書士試験と科目免除。
  2. 合格者が登録前に受ける養成制度
  3. すでに登録している司法書士の継続研修

この3つの項目について「法科大学院など」をうまく活用して、司法書士を養成する新しい制度ができないか?という提言です。

じつは新司法書士試験の中身はなにひとつ決まっていません

そこで、みなさんが一番気になっている「新司法書士試験」ですが、これはあくまでも「司法書士養成制度検討会」という民間の会議が出した提言に過ぎません。

とうことで、実際には何も決まっていません。そのことは先に申し上げておきます。

それでも概要がどうなっているのか気になる方もいると思いますので、THINK(シンク)という雑誌に書いてある「新司法書士試験」についてご紹介しておきます。

『新司法書士試験』の概要

【ご注意】現時点では提言にすぎません

新司法書士試験になっても、現在と同じように受験資格は特に設けないが、法科大学院の卒業生は司法書士試験の科目を一部免除してはどうか?という内容になっています。

もう一度言いますが、法科大学院の卒業生は科目一部免除というお話は、これは提言にすぎませんので、あんまり真に受けないほうが良いです。

新司法書士試験の実現度は限りなく低いです

「新司法書士試験」の実現性も気になると思いますが、「近い将来、たとえば数年以内に司法書士試験の制度が変わる可能性は、限りなく低いです」ということです。

というのも、司法書士養成制度検討会の最終報告書は「2016年6月」に出てきたものです。

でも、そこからすでに5年以上経過していますが、まったくそのお話は進んでいないからです。

5年以上経っても変化の兆しもありませんし、たとえこれから「新司法書士試験」の構想を進めていくとしても、法律の改正が必要になってくるお話ですので、かなりの年月がかかることが予想されます。

というわけで、新司法書士試験のお話は、民間の会議が出した提言に過ぎません。

近い将来に、法科大学院を活用した新しい試験制度が導入される可能性はほぼゼロだと考えています。

新司法書士試験はいつか始まるのではないかとご心配の方もいるかもしれませんが、当分の間はご安心いただけるはずです。

まとめ

今回は「司法書士試験の免除制度と新司法書士試験」というテーマで、

法務局の職員や、裁判所の職員の一部のかたは、一定の年数を公務員として務めると、法務大臣による認定を受けて、司法書士となる資格を与えられることがあります。ただし、その数はとても少なくなっています。

新司法書士試験構想は、あくまでも民間の会議による提言に過ぎません。実現する目処も立っていません。

というわけで、早く司法書士になりたいと思っている方は、普通に受験対策をして、司法書士試験を受けることをおすすめします。

というお話をいたしました。

この記事を最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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