「国が認めた借金救済制度」という広告と「借金減額シミュレーター」について解説します

今回は「国が認めた借金救済制度」の中身と「借金減額シミュレーター」の謎について解説いたします。
時々見かけるインターネット上の広告で、「国が認めた借金救済制度」というキャッチコピーを見かけることがありまして、怪しいなあと思いながらも、その怪しさに引かれるところもあって、調べてみました。
ネタバレになりますが、結局は債務整理を専門にやっている法律系の事務所だったりします。
そのような債務整理系の事務所のホームページを見ていると、今度は「借金減額シュミレーター」とか「借金減額診断」という面白い仕掛けがホームページの中にありました。
この記事の筆者
司法書士事務所を開業して今年で10年経ちました。
日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことを動画でお話ししています。
この記事の概要
国が認めた借金救済制度を一言でいうと債務整理
国が認めた借金救済制度はつまり「債務整理」です。
債務整理とは、借金の返済がとても苦しい状態になった方が利用する制度です。
債務整理の中には、裁判所に申し立てておこなう手続きいくつかあります。また、裁判所を使わずに金融機関と交渉することで借金減額をする方法もあります。
債務整理の手続きにはどんなものがあるのか?手続きをしたときのメリット・デメリットついては、ブログの後半(借金救済制度を使ったときのメリット・デメリット)で解説しますので、気になる方はそちらもご覧ください。
国が認めた借金救済制度という広告は詐欺なのか?
ホームページを運営しているところが、「弁護士・司法書士の事務所」でしたら、詐欺ではありません。
債務整理業務は、法律の専門家である弁護士や司法書士でしたら取り扱うことができます。
筆者が「借金救済制度」とか「借金減額制度」といった宣伝文句でアクセスを集めているサイトを5つか6つくらい見ましたが、いずれも弁護士や司法書士が運営していました。
一般の会社・団体では債務整理は取り扱えません
気をつけなければいけないのは、法律の専門家(弁護士・司法書士)ではない、一般の会社とか団体が「借金減額」とか「借金救済」という言葉を使って債務整理の業務をしているのでしたら、そこは避けた方が無難です。
「国が認めた借金救済制度」に類似した宣伝文句で、いろんな事務所が広告を出しています。
判断基準としては、弁護士か司法書士の事務所であるかどうかで判断したほうがいいと思います。
次のセクションでは、借金救済制度にはどんなものがあるか?そのメリット・デメリットについてお話しします。
借金救済制度を使ったときのメリット・デメリット
インターネットなんかで見かける債務整理の広告は、ほとんどが個人の方に向けたものですので、今回は、個人が債務整理・借金整理をする場合についてお話しします。
手続きは4つです。
自己破産、個人再生、任意整理、過払い金返還請求、この4つです。
(他にも特定調停とかあるのですが、マイナーなので今回は説明を省きます。)
自己破産は借金の「免責」を目指す手続きです

自己破産は、借金の返済がかなり無理になってしまった人が、裁判所に申し立てることで借金の免責を目指す手続きです。
免責というのは法律用語になりますが、要するに借金の支払い義務から解放されることです。これがメリットになります。
デメリットは、ブラックリストに入ってしまうということです。
ここでいうブラックリストというのは、信用情報に破産の情報が登録されてしまうことです。
信用情報は、銀行やクレジットカード会社などの金融機関が加盟する信用情報機関で登録、管理されています。
信用情報は他の金融機関にも共有されますので、一旦ブラックリストに載ると一定の期間は、新たな借入が難しくなってしまいます。
個人再生は借入額の大幅カット

個人再生も、借金の返済がとても苦しくなってしまった人が使うことができる制度です。
個人再生も裁判所に申し立てる手続きです。
個人再生の手続きを受けると、どんなメリットがあるかと言えば、元本を大幅にカットしてもらった上で、残った残額について分割で返済していくことになります。(減額できる割合は借金の総額によります。)
元本が大幅にカットされると、毎月の返済額も減りますので、支払いが楽になります。
とはいえ、支払い額がゼロになるわけではありませんので、個人再生を利用できる方は、基本的には、ある程度収入のある方(あるいは見込みのある方)ということになります。
個人再生のデメリットですが、自己破産と同じく一定の期間はブラックリストに載ってしまうことです。
そうなると、「じゃあ、どうせブラックリストに載ってしまうのだったら、自己破産でいいじゃないか?そちらの方が免責してもらえそうだし。」
そんなご意見もありそうですね。
でも、自己破産だと一定の金額以上の手持ちの財産がある人は、それを手放す必要があります。借金の全額免除を目指す手続きですから当然ですよね。
自己破産と比べて、個人再生の場合は、財産をある程度手元に残したまま、借金を減額できるというところです。
たとえば、自宅の住宅ローンの支払いを続けながら、それ以外の借金の減額できる場合もあります。(住宅ローン特則)
任意整理は月々の返済額を減らす効果があります

任意整理は、裁判所を使った手続きではありません。
これは、任意という言葉が入っているように、裁判所を使わずに、お金を貸している金融機関と話し合って交渉をして、借金返済のリスケジュール(返済計画の見直し)をします。
メリットは、分割払いの期間を伸ばしてもらうことです。さらに、利息部分をカットしてもらえることもあります。
もうひとつのメリットですが、任意整理は裁判所の手続きを使いませんので、割と短い期間で借金の返済に道筋をつけることができます。
というわけで、任意整理が成立すれば、利息なしで元本だけを数年間にわたって分割して返済するのですから、毎月の支払いはかなり楽になります。
デメリットですが、やはりブラックリストに載ります。
任意整理をしたという記録は、金融機関の信用情報に一定の期間は残ってしまいます。
過払金返還請求は正当な権利です

過払金請求のメリットは、払い過ぎた利息が返ってくることです。現金で過払金が返ってくることも多いです。
過払金返還請求のもうひとつのメリットは、過払い金返還請求は正当な手続きですので基本的にはブラックリストには載りません。
過払金(かばらいきん)返還請求とは?
過払金返還請求というのは、払いすぎた利息を返還してもらう正当な手続きのことです。
少し前の話になりますが、消費者金融とかクレジットカードからの借金の金利がとっても高かった時代があります。
2007年頃までは、年間の金利が約29%という時代がありました。
そんな時期に、高金利を支払っていた人は、後で利息の一部を取り戻すことができる場合があります。
昔そういえば高金利で借りていたことがあるなあ、という心当たりのある方は、ひょっとすると過払金が発生しているかもしれません。
過払金返還請求のデメリットですが、最近の借り入れの場合は過払金は発生しません。
2007年頃からあとは、利息は引き下げられたからです。
借金減額シミュレーターの仕組みはどうなっているのか?
「借金減額シミュレーター」とは、オンラインで借金について簡単ないくつかの質問に答えると、弁護士・司法書士の事務所からメールなどで、何らかの回答をもらえるというものです。
弁護士・司法書士の事務所の中でも、債務整理についてさかんに宣伝している事務所があります。
そんな事務所のホームページの中に、「借金減額シミュレーター」が設けられていることが多いです。
事務所によってその名称は「借金減額診断」などいろんな名前がつけられていますが、どの事務所でもその内容はほとんど一緒です。
私も、実際にも借金減額シミュレーターを置いているサイトを何か所も見てきました。
それで、どんな内容だったかといえば、まず最初に「借金減額シミュレーター」の中でいくつか質問が出されていますので、これに対して回答を入力することになります。
どのような情報を借金減額シミュレーターに入力するのか?
最初に「あなたの借金の情報」を入力します。
- 借入総額
- 毎月の返済額
- 借入先は何社か?
- 最初の借入時期はいつ頃だったのか?
など

次に、連絡先などの情報を入力します。
- お住まいの都道府県
- 電話番号
- メールアドレス
- 場合によっては年齢・名前(匿名可)など

そして最後に「送信ボタン」を押すと、あとで、弁護士・司法書士の事務所から、何らかの回答をもらえるようになっています。
筆者の素直な感想
借金シミュレーターを体験した筆者の感想です
あなたが入力した情報だけで、どれくらい借金が減るのか、最終的な診断をつけることは難しいと思います。
何社から借りているという情報を入力したとしても、どこの会社からいくらの借り入れ残高があるのかわかりません。
そして、借金を減額したいと考えている方のお勤め先や年収などの情報もありませんので、返済計画を立てることは難しいです。
というわけで、シミュレーターの質問だけでは、「どのような債務整理の方法がおすすめなのか、回答することは難しいだろうな・・・」と筆者は感じました。
そう考えると、借金減額シミュレーターとは、ホームページを訪れた人が、わりと答えやすい情報を先に入力してもらって、その後の相談をスムーズに進めるためのツールだと思います。
あなたの情報を送信しても大丈夫なのか?

あともう一点、「借金減額シミュレーターで、自分の情報を入力して送っても大丈夫なのか?」という疑問もあるかもしれません。
これについては、弁護士会とか司法書士会といった正式な団体に登録している「弁護士事務所」・「司法書士事務所」でしたら問題はないと思います。
ですから、借金減額シミュレーターの質問に正直に入力して、送信する分にはデメリットはほとんどないと思います。
でも、「デメリットはほとんどないと言っているけど、少しはあるのじゃないの?」と思った方もいるはずです。
そうですね、デメリットも正直に言いましょう。
借金減額シミュレーターのデメリット
まず最初に、借金減額シミュレーターで、あなたのメールアドレス・電話番号といった連絡先を入力しています。
ということは、弁護士・司法書士の事務所から問い合わせのメールが送られてきたり、お電話がかかってくる可能性は高いです。
ですから、「連絡がくるのは嫌だな・・」と思う方は、借金減額シミュレーターは使わないほうが良いですね。
ですが、たとえ弁護士・司法書士の事務所から連絡があったとしても、その事務所に依頼するのも断るのも依頼者の自由です。
お話しをしてみて、「なんだか変な事務所だなあ。」と思ったら、断ることもできますので、借金減額シミュレーターのことを過剰に気にしなくても良いと思います。
というわけで、借金を整理したいと考えている方でしたら、「借金減額シミュレーター」とか「借金減額診断」というのは、事前の簡単なアンケートだと思ったほうがいいですね。
まとめ
- 国が認めた借金救済制度を一言でいうと債務整理
- 国が認めた借金救済制度という広告は詐欺なのか?
- 弁護士や司法書士の事務所でしたら詐欺ではありません。
- 借金救済制度を使ったときのメリット・デメリット
- この記事で「4つの制度」をご紹介しました。
- 自己破産、個人再生、任意整理、過払金返還請求の4つです。
- 借金減額シミュレーターの仕組みはどうなっているのか?
- インターネットを用いた「事前の簡単なアンケート」ということです。