任意整理から個人再生に切り替えはできるのか【メリットと注意点】
任意整理をして支払いをする人「少し前に任意整理をして借金を返済をしているけど、収入が減ってしまった。個人再生という手続きがあるみたいだけど、切り替えることはできるのかな?費用ってどうなるのかな?」
このような疑問にお答えしていきます。
この記事の概要
- 任意整理から個人再生に切り替えるケース
- 個人再生に切り替えるメリット
- 個人再生に切り替えができる要件はどうなのか?
- 個人再生に切り替えるときの注意点
こんにちは諌山(いさやま)です。
私は債務整理専門の大手司法書士事務所や、債権回収会社につとめていたことがあります。
任意整理から個人再生に切り替えるケース
任意整理の話し合いや、その後の支払いの途中でなんらかの事情が出てきたことから、うまくいかないケースがあります。
【ケース1】任意整理の交渉が成り立たなくなった
貸金業者などのお金の貸し手との交渉で、支払い条件として厳しい内容が出てきて、業者が譲らない場合、任意整理が難しくなることがあります。
業者によっては、利息や損害金のカットに応じなかったり、分割の支払いを認めなかったりすることがあるのです。
任意整理とは、債権者(あなたにお金を貸している会社・個人)との話し合いや交渉によって、未払い利息や損害金をカットしたうえで、元本を分割支払いする手続きのことです。
任意整理の成立は、「毎月支払える金額におさまるかどうか」にかかってきます。
債務整理を弁護士・司法書士事務所に依頼している場合でしたら、事務所のスタッフは業者とねばり強く交渉しますが、業者の態度によっては、話し合いが進まなくなることもあります。
個人再生がダメになるケース
- 分割返済の期間が3年以内に収まらずに、さらに長期の支払い期間を求めるような場合に、業者が認めないケースがあります。
- 業者の会社方針で、一括での支払いでないと応じない場合もあります。残りの元本の額が少ない場合にはよく見られるケースです。「残額が少ないから早く支払ってください」ということです。
任意整理後の支払いが難しくなった
任意整理の交渉が成立して、分割支払いをはじめたけれど、収入の減少などで支払いが難しくなってしまうことがあります。
任意整理をしたときに、貸金業者との合意内容として、分割支払いを2回遅れてしまったときは、一括返済を求めることができる約束になっているケースが多いです。
すぐに支払いを追いつかせることができればいいのですが、収入の減少などが一時的なものではなく長期になりそうなときには、債務整理の方法について再び検討することになると思います。
任意整理を再度おこなう(再和解)という方法と、個人再生のような裁判所を使った手続きに切り替える方法があります。
個人再生に切り替えるメリット
借金の総額が大幅に減額される
基本的に、借金の総額は5分の1になります(住宅ローンを除く)。ただし最低支払額は100万円です。
借金の総額と個人再生手続きの種類(小規模or給与所得者等)によって、段階的に最低支払額が決められていますので、以下の表をご参考にされてください。
小規模個人再生の場合
借金などの総額(住宅ローンを除く)に応じて、借金などの総額がつぎのとおり減額されます。
- 100万円未満の人・・・・・・総額全部
- 100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
- 500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
- 1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円
- 3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1
給与所得者等再生手続きの場合
サラリーマンなどで給与などの定期的な収入がある方で、給与所得者等再生手続きを選択した場合は、以下の条件が付きます。
「小規模個人再生の場合の最低支払額」と「2年分の可処分所得額」を比べて、多い方の金額を最低支払額とします。
※可処分所得額とは、「自分の収入の額」から「税金の合計額」や「最低限度の生活費」などを差し引いた残りの金額のことです。
借金の総額が多いとメリットも大きい
任意整理から個人再生に切り替えるとき、借金の総額がある程度多い場合には、メリットも大きくなります。
小規模個人再生の最低支払額を見ると、わかっていただけると思います。
- 100万円未満の人・・・・・・総額全部
- 100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
- 500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
(以下略)
ケースバイケースですが、だいたい言えることは、借金の総額が100万円とか200万円くらいだと、個人再生の手続きを使っても、借金の減額率は多くはならないので、メリットがそれほどないです。
後で述べるように、いろいろなデメリットを乗り越えて個人再生に切り替えるわけですから、借金の総額がどれくらい減るのか、その金額は大切な判断材料になります。
支払い期間として3年間
個人再生の支払い期間は3年間が基本になります。(最大5年まで認められる場合もあります)
任意整理の場合もおおむね3年間になるケースが多いですので、支払い期間はあまりかわりません。
ただし、任意整理をしたあと分割支払いが困難になったケースでは、個人再生の手続きによって、もう一度支払い期間を設定しなおしますので、申し立てするメリットはあります。
減額される場合は、減額された後の金額を分割支払い
個人再生の場合は、減額された後の金額を分割支払いすることになります。
その一方で、任意整理の場合は元本の全額が支払いのベースになります。
したがって、個人再生は任意整理と比べて、月々の支払額は少なくすむケースがほとんどです。
住宅ローンがあっても個人再生に切り替えできる
個人再生の場合は、住宅ローンをそのまま残したまま、それ以外の借金を減額して、借金の減額をすることができます。
ただし、住宅ローンの減額はできません。さすがにそこまでは無理です。
それでも、自宅を手放すことなく住宅ローンを支払いながら、減額された借金を分割支払いすることができるメリットがあります。
次に、個人再生に切り替えることができる要件について述べていきます。
借金の理由は問われない
個人再生の手続きは、投機性の高い用途であったり、ギャンブルとか浪費であっても、手続きを申し立てることはできます。
たとえ、fx(為替証拠金取引)やパチンコのような「投機性の高いもの」のために借金をした場合でも、個人再生の手続きを使うことはできます。
自己破産の場合
借金の使い道が、ギャンブルであったり、投機性の高い商品の購入だった場合には、裁判所から「免責許可」を受けることが難しくなって、借金を支払う責任が残る場合があります。
個人再生に切り替えができる要件はどうなのか?
個人再生に切り替えるためには、法律で定められた要件をクリアする必要があります。
継続的な収入の見込みがあること
将来にわたって継続的に収入を得る見込みがある人が対象となっています。
個人事業をしている人やサラリーマンでしたらほとんどの方は対象になります。
自営業者で、収入が得られる時期に片寄りがある場合はどうなるかと言えば、一定期間の収入をならして考えることになります。
ならしてみて安定的な収入が見込まれるケースであれば可能性はあります。
無職の方はどうなるかと言えば、たとえば就職先が決まっていて、近い将来に継続的に収入が得られる見込みがあれば可能性は十分にあります。
借金の総額が5000万円以下
借金の総額が5000万円以下であることが要件となっています。
5000万円となっている理由ですが、サラリーマンだけではなく、個人の事業者で事業資金を借り入れている方や、多額の仕入れ代金を負担しているような方も対象としているためです。
債権者の同意が必要である場合
小規模個人再生手続きは、債権者(あなたにお金を貸している会社・個人)の同意が条件となっています。
給与所得者等再生を選択した場合は、債権者の同意がなくても手続きを進めることができる違いがあります。
そのかわり、この記事の「個人再生に切り替えるメリット」のところで述べたように、小規模個人再生よりも最低支払額が多くなる場合があります。
個人再生に切り替えるときの注意点
費用はかかります
個人再生を申し立てるための費用がかかりますのが、おおむね以下のとおりです。
裁判所に納める費用:3~4万円程度
(民事再生委員の費用は別)
債務整理専門の弁護士・司法書士事務所に手続きを依頼するとき、専門家に支払う報酬が別にかかります。
下記は債務整理を専門としている事務所の報酬の一例になります。
ありていに申し上げますと、だいたいどの事務所でもそんなに大きく変わることはないです。それなりの費用はかかります。
報酬の一例
司法書士事務所で33万円(税別)~
弁護士事務所で37万円(税別)~
こんなお金はないよ!という方へ
弁護士・司法書士といった専門家に支払う報酬は、個人再生を申し立てるまでに積み立てることによって準備する方法がよく取られます。
いまお金がなくても費用を準備する方法はありますので、そんなに悩まずに債務整理の専門事務所に相談することはできます。
すぐには個人再生手続きに切り替わらない
任意整理から個人再生にはすぐには切り替わりません。
個人再生の手続きを始めるには、裁判所に申し立てる必要があります。
裁判所に申し立ててから再生計画の認可まで、平均約152日間(約5か月)となっています。(日本弁護連合会の「2017年破産事件及び個人再生事件記録調査」)
司法書士・弁護士事務所に手続きを依頼した場合には、先にお借り入れ全体の調査をしますので、上記の期間に加えて2~3か月程度、調査する期間がプラスされます。
保証人がいるとそちらに請求がいきます
あなたの借り入れの中に、保証人を付けた融資がある場合には、その保証人に請求がいきます。
個人再生手続きは、全部の借入先を対象にして個人再生の手続きを進めることになります。
任意整理のように保証人がついた借入だけを除くことはできないからです。
自動車ローン支払い中だと車を失う可能性あり
あなたが自動車ローンを使って自動車を購入している場合は、自動車が回収される可能性があります。
ローンを支払っている途中でしたら、その自動車の所有権は購入したディーラーやクレジット会社が持っていることが多いです。
これを所有権留保と言います。
自動車ローンの支払いが回収できない場合、ディーラーなどはその自動車を回収して売却することになります。
官報に名前が載ります
個人再生手続きが始まるときに、「官報」という政府が発行している日刊の公告文書に、あなたの住所・氏名が載ります。
一般の方は官報はあまり見ないため、日常生活で影響はないかもしれません。
ただし、金融機関などの職業的に官報をチェックしているところには、もちろん知られることになります。
まとめ
- 任意整理から個人再生に切り替えるケース
→交渉がうまくいかない場合。任意整理した後の支払い困難。 - 個人再生に切り替えるメリット
→支払い総額を大幅に圧縮できます。
→借金の総額が多いときにメリットも大きくなります
→住宅ローン条項を使って、自宅を守ることもできます
→借金の理由は問われません - 個人再生に切り替えができる要件はどうなのか?
→継続的収入ありであること。借金の総額5000万円以内。 - 個人再生に切り替えるときの注意点
→費用がかかりますが対処法ありです。保証人に請求がいく場合もありです。
任意整理から個人再生への切り替えをするときのメリット、要件、注意点などを述べてきました。
個人再生の手続きが始まると、多くのケースで月々の支払額が少なくなり返済が楽になります。
ただし、申し立てのために多数の資料集めや書類作成が必要になります。
しかも、これらの作業はすべて裁判所が定めた期限内におこなう必要がありますのでご注意ください。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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