住所変更登記義務化の罰則を避けるための「検索用情報の申出」制度がスタート!

住所変更登記の義務化が始まります。

不動産の所有名義を持っている人は、住所や氏名が変わったら登記しないといけなくなり、その登記を怠ると罰則もあります。

とはいえ、うっかり忘れる人も出てくるでしょう。

そんな人のために「検索用情報の申出」という新制度がスタートしました。

あらかじめ法務局に検索用情報を申し出ておけば、無料で所有者の住所や氏名の変更を検索してくれて、登記までやってくれる便利な仕組みとなっています。

今回はこれらの制度について詳しく解説します。

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この記事の筆者

司法書士事務所を開業して今年で14年経ちました。

日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことをブログで述べています。

この記事の概要

住所変更登記義務化は2026年4月1日スタート

住所変更登記の義務化スタート

住所変更登記の義務化が、2026年(令和8年)4月1日から始まります。

土地や建物といった不動産を持っている人が、住所や氏名を変更した場合は、変更日から2年以内に登記しなければならなくなります。

しかも、これを怠ると罰則があります。5万円以下の「過料(かりょう)」が科される可能性があります。

過料は行政罰ですが、結局はお金を支払わなければいけません。

過去の住所・氏名の変更も対象です

過去の住所変更も対象です

さらに、この制度は2026年(令和8年)4月1日より前に住所や氏名を変更をしていた人も対象です。

つまり、すでに引っ越しなどで住所が変わっているのに、まだ登記していない人も、この義務化の対象になるということです。

では、住所変更登記義務化の制度が始まる前(〜2026年3月31日)に住所や氏名が変わっていた場合、いつまでに登記申請をすればいいのでしょうか?

その答えは、制度スタートから2年以内・・・つまり、2028年(令和10年)3月31日までに登記を済ませる必要があります。

ということで、罰則付きの住所変更登記義務化がスタートするだけでなく、制度開始の前後を問わず、住所や氏名に変更があれば、すべて義務化の対象になるということが分かりました。

住所・氏名の変更登記をうっかり忘れないように

住所変更登記を忘れがちな理由

でも、近いうちに引っ越す予定があったり、結婚などで名前が変わることが分かっていれば、忘れずに変更登記をすれば大丈夫ですよね。

ただ、その一方で、普段の生活の中で引っ越しや名前の変更なんて、そうそう頻繁にあるものではありません。

そう考えると、たとえば5年後・10年後、あるいは20年後に引っ越しをしたとき、すっかり住所変更登記を忘れていた、なんてこと、けっこう起こりうると思うのです。

「もう引っ越すことはないだろう」と思っていても、転勤や転職がきっかけで、急に住所が変わることもあるかもしれません。

人生の後半に入ってから、終の住処に移ったり、老人ホームに住民票を移すことになる人もいるでしょう。

今は「人生100年時代」とも言われています。いつ、どんなタイミングで苗字が変わるかも分かりません。

不動産を複数持っている人はもれなく忘れずに

不動産は自宅だけではない

それに、不動産といっても自宅だけとは限りません。

別荘やアパートを持っている方もいれば、畑や田んぼ、山林といった土地を所有している方もいます。

中には、もう誰も住んでいない実家の土地や建物を持っているという方もいるのではないでしょうか。

このように、住所や名前がいつ変わるか分かりませんし、不動産を複数持っていると、つい変更登記を忘れてしまう可能性も高くなります。

ということで、今後は住所変更や氏名変更の登記をうっかり忘れてしまうケースが、かなり増えてくるのではないかと思っています。

検索用情報の申出は2025年4月21日から始まってます

検索用情報の申出とは?

住所(氏名)変更登記のうっかり忘れを防ぐための新しい制度、

「検索用情報の申出」が、2025年(令和7年)4月21日からスタートしました。

しかも、この制度、なんと無料です。

この制度では、不動産の所有者があらかじめ住所、氏名、ふりがな、生年月日、メールアドレスなどを法務局に申し出ておくと、法務局がその情報をもとに住基ネットを使って、定期的に住所や氏名の変更がないかを検索してくれるようになります。

そして、変更が見つかれば、法務局がなんと職権で登記の変更までしてくれるんです。

これも無料です。

つまり、自分で登記を忘れてしまっても、罰則を回避できる可能性が高くなるという、非常に便利な仕組みになっています。

検索用情報の申出はどうして便利なのか?

ちなみに、この一連の流れを、法務省では「スマート変更登記」と呼んでいます。

法務局のサイトでこの言葉を見かけたら、「ああ、あの自動で住所氏名の変更登記をしてくれる制度のことか」と思い出してもらえればオッケーです。

これから新たに不動産を取得する人は?

そして、2025年(令和7年)4月21日以降に、新たに不動産を取得する人・・・

たとえば売買や相続などで所有者になる人は、登記のときに、氏名のふりがなや生年月日、メールアドレスなどの検索用情報も、法務局に一緒に提出することが基本になります。

ですので、新しく不動産を取得するとき、あわせて検索用情報も申し出てる人は、あらためて申出をする必要はありません。

検索用情報の申出をしておいた方がいい人

こんな人が検索用情報の申出をしたほうがいいです

ということは、この検索用情報の申出が必要なのは、2025年(令和7年)4月21日より前にすでに不動産を持っている人、ということになります。

申し出る情報は、日本に住んでいる日本国籍の個人の場合、次の5つです。

住所・氏名・ふりがな・生年月日・メールアドレスです。

ただし、メールアドレスは実質的には任意です。

メルアドを持っていない人、できれば知られたくない人もいますので、メールアドレスを申し出ないこともいちおう可能です。

メールアドレスを登録すると、法務局が変更を検知したときに、メールで本人に連絡して確認をとります。

そして、本人の了解があれば登記を実行するという流れになります。文字どおり、スマート変更登記ですね。

ちなみに、メールアドレスを申し出ない場合は、法務局から書面で連絡がくる想定となっています。

申出はオンライン・書面どちらでもオッケー!必要書類は身分証明書写し1点!

検索用情報の申出の方法は?

申出は、「オンライン」でも「書面」でもオッケーです。

必要な書類は、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の写し1点が基本となっています。

オンライン申出でしたらPDFで、書面申出であればコピーを同封すれば大丈夫です。

複数の不動産もまとめて一か所の法務局に申出できる

複数の不動産もまとめてオッケー!

ほかにもメリットとして、不動産があちこちの住所に複数あっても、1か所の法務局でまとめて申出ができることです。

不動産の所在地によって管轄法務局が違ってくることがありますが、この制度では、日本全国のあちこちに不動産を持っていたとしても、すべての不動産について「どこか一か所の管轄法務局」に申し出れば、全国の不動産についてまとめて対応してもらえます。

【注意点①】申出をしていない不動産は対象外です

申出していない不動産は対象外

ただし注意点として、申し出をしていない不動産については、住所・氏名の検索対象になりません。

たとえば、自宅の土地建物は申出をしたけど、山林は申出をしてない、という場合、山林の登記は自動では変更されないということになります。

ですので、不動産を複数持っている方は、できるだけ、すべてまとめて申出しておくことをおすすめしますします。

不動産を複数人で共有している場合は、共有者ごとに検索用情報の申出をすることになります。申出をしていない共有者は自動で変更されません。

それから、「昔の住所のまま登記簿にのっているけど大丈夫かな?」という疑問もあるかと思いますが、現在の住所を申出書に記入すれば構いません。

不動産の所有者として古い住所のまま登記されていても、申出はできますのでご安心ください。

【注意点②】検索用情報の申出をしてもすぐには変更登記されません

すぐには変更登記されません

さて、ここまで聞くと、良いことばっかりの制度に思えますが、1つ注意点があります。

それは、法務局による検索や職権登記はすぐに始まるわけではない、ということです。

法務局による住基ネットを使った検索を始めるのは2026年(令和8年)4月1日からです。 しかも、検索の頻度については今のところ法務省からはっきりとした発表は出てないです。

ですから、「早めに住所変更登記を済ませたいなあ」と思っている方は、この制度ではなく、所有者の住所変更登記を申請することをおすすめします。

ということで「検索用情報の申出」制度について解説しました。

まとめ

というわけで今回は、相続登記の義務化がスタートすること、義務化による罰則を避けることができる検索用情報の申出制度がすでに始まっていることについて解説しました。

申出は任意ですが、一度やっておけば将来の負担がグッと軽くなるはずです。オンラインでも書面でも手続きできますので、よろしければチャレンジしてみましょう。

この記事を最後までお読みくださいましてありがとうございました。

関連リンク
法務省ホームページ「住所等変更登記の義務化特設ページ」
法務省ホームページ「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)

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当事務所のYouTube動画でも住所変更登記義務化と検索用情報の申出の制度についてお話ししています。

自分で検索用情報の申出をする方法についても詳しく解説しています。

よろしければぜひご覧ください!

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