任意整理と個人再生の違いについてポイント解説します
借金の支払いが大変になってきた方
「毎月の支払いが苦しくなって、債務整理をしようと思っている。収入から少しずつでも支払っていきたいので破産は考えていない。任意整理とか個人再生という手続きがあるみたいだけど、何が違うのかな?」
こんなお悩みにお答えしたいと思います。
この記事の概要
- 任意整理と個人再生の大きな違いはカット率
- 任意整理を選ぶメリット【4つ】
- 個人再生を選ぶメリット【3つ】
こんにちは、諌山(いさやま)です。
私は債務整理専門の大手司法書士事務所や、債権回収会社につとめていたことがあります。
任意整理と個人再生の大きな違いはカット率
任意整理でも個人再生でも、重要なのは「月々の支払額がいくらになるか?」ということです。
任意整理は利息・損害金のカットが基本です
任意整理の場合は、基本的に元本はそのままで、未払いの利息・損害金はカットできるケースがほとんどです。
また、貸金業者との合意内容には、きちんと分割返済をしている間の利息・損害金も発生しないことにしているケースがほとんどです。
したがって、現在残っている元本のみを分割返済していくことになります。
支払期間は3年間が基本になります。
3年間より長い期間については貸金業者との話し合いによります。
任意整理を弁護士・司法書士事務所に依頼したときは、事務所のスタッフが交渉します。
個人再生は総額が5分の1になる場合あり
個人再生の場合は、原則として借金の総額の5分の1(80%カット)の支払いになります(住宅ローンを除く)。ただし、最低支払額は100万円です。
たとえば、元本が200万円で未払いの利息損害金が50万円ある方の最低支払額の計算は次のとおりです。
合計250万円×5分の1(20%)=50万円となります。
ただし、最低支払額が100万円ですので、100万円になります。
個人再生でも支払期間は3年間が原則です。ただし、「特別な事情」があれば、最長5年まで伸ばしてもらえる場合もあります。
「特別な事情」とは、個人再生手続きで支払い総額が想定よりも多くなった場合です。再生手続きでの支払い総額は、破産した場合の配当予想額を上回ることが求められるからです。
任意整理を選ぶメリット【4つ】
家族に秘密にしたい
同居の家族に知られないように債務整理したい方は、任意整理を選ぶことをオススメします。(ただし、弁護士・司法書士事務所に依頼する場合に限る)
裁判所からの郵便物が送られてくることはありません。任意整理は貸金業者との話し合いによる解決を目指す方法だからです。
貸金業者からの郵便物についてですが、弁護士・司法書士事務所に依頼している間は、業者から依頼者への直接の郵便や電話連絡をストップしてもらえます。
事務所が介入すると、法令によって、業者はお金の借り主に直接の連絡をすることができなくなるからです。
弁護士・司法書士事務所から依頼者への郵便物については、自宅などに郵便物を送ってほしくないときは、郵便物を送らない対応をとってもらえますので安心ですね。
その場合、別の送り先を指定するか、事務所にときどき書類を取りに行くことになります。
個人再生の場合は、
申し立て先である裁判所に、同居の家族の収入についても申告しなければなりません。
その際、家族の収入の「給与明細書」や「源泉徴収票」の提出を求められますので、秘密にしておくことは難しいといえます。
債権者を選んで任意整理の手続きができる
債権者とは、あなたにお金を貸している人や会社のことを言います。
複数の借り入れ先があるときは、任意整理したい債権者を選んで手続きをすることができます。
債務整理したくない借り入れ先として次のような相手があるときは、任意整理が有効だと思います。
例
- お勤め先の会社からの融資(社員貸付制度)
- 知人・親族からの借り入れ
- 親戚や友人が保証人である借り入れ
- 自動車ローン
手続きに時間がかからない
任意整理を債務整理専門の事務所に依頼する場合は、事務所の訪問は少ない回数ですみます。基本的には1回程度ですみます。
依頼者と貸金業者との間に事務所が介入したあとは、事務所が業者と交渉して解決するからです。
個人再生の場合は、裁判所という役所で手続きが進みますので、どうしても期間がかかります。
日本弁護連合会の「2017年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、個人再生を申し立ててから再生計画の認可まで、平均約152日間(約5か月)となっています。
これには、弁護士事務所が依頼者から相談を受けて、申し立てをするまでの期間は含まれておりません。
したがって実際には、相談から個人再生の認可まで、半年以上かかるケースが多くなります。
裁判所に提出する書類も多数必要になりますので、準備するための手間ひまはそれなりにかかります。
官報に載ることはない
任意整理の方法で借金の整理をしても、官報に載ることはありません。
依頼者と貸金業者の民間同士の手続きだからです。
ちなみに、官報とは、政府から国民に対するお知らせが書いてある日刊の公告文書です。
個人再生の場合は、裁判所で再生手続きが始まったときに、手続きを申し立てた人の住所・氏名が官報に載ります。
一般の方は、官報なんてほとんど見ないかもしれません。
ただし、以前は新聞のように紙で発行された官報しかありませんでしたが、現在はインターネット版の官報を誰でもネットで見ることができます。
以前よりは、一般に知られる可能性は少し高くなっているかもしれません。
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個人再生を選ぶメリット【3つ】
借金の総額が多いときに有利
借金の総額が多くて、任意整理では毎月の支払額が多すぎる場合には、個人再生を選んだ方が良いです。
個人再生の場合は、原則として借金総額の5分の1の支払いですみます。ただし、最低支払額は100万円です。
小規模個人再生手続の場合、最低限の返済額のおおよその目安は次のとおりになってます。
借金などの総額(住宅ローンを除く)に応じて、借金などの総額が
100万円未満の人・・・・・・総額全部
100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
債権者が反対するケースはほとんどない
個人再生(小規模個人再生)の場合は、債権者(お金を貸している人・会社)の半数が反対すると、手続きが始まりません。でも実際のところ、債権者が反対するケースはごくわずかです。
近年の統計資料では、小規模個人再生事件において反対する債権者は「8%代」であり、とっても少ないです。
(日本弁護連合会・2017年破産事件及び個人再生事件記録調査)
差し押さえ手続きが中止になる
もうすでに債権者から、なんらかの差し押さえ手続きを受けているときは、個人再生の手続きが始まると中止されます。
給与などの差し押さえを受けている場合は、落ち着いた環境で、手続きを進めることができるようになります。
まとめ
- 任意整理と個人再生の大きな違いはカット率
→任意整理は利息・損害金のカットが基本
→個人再生は総額が5分の1になる場合あり - 任意整理を選ぶメリット【4つ】
→家族に秘密にしたい
→債権者を選んで任意整理の手続きができる
→手続きに時間がかからない
→官報に載ることはない - 個人再生を選ぶメリット【3つ】
→借金の総額が多いときに有利
→債権者が反対するケースはほとんどない
→差し押さえ手続きが中止になる
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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