開業司法書士の平均年収について最新データをもとに解説します

開業司法書士の平均年収を詳しく解説

今回は司法書士の平均年収について、最近出てきたデータをもとにお話ししたいと思います。

司法書士白書という司法書士の全国団体が出版している本がありまして、毎年1回発行されています。

この司法書士白書という本でたまに発表されている統計がありまして、それは司法書士全国調査という統計です。

司法書士白書の2021年度版では、10年ぶりに司法書士の実態について全国調査を行った結果が公表されていまして、開業司法書士の年収と、経費を差し引いた後の数字である所得の金額についても載っています。

以前、別の記事(司法書士の年収について統計資料をもとに解説します【年収以外の魅力も】)でも司法書士の年収のお話をしていますが、今回は新しいデータをもとに、開業司法書士の年収についてわかりやすく解説していきたいと思います。

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この記事の筆者

司法書士事務所を開業して今年で10年経ちました。

日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことをブログで述べています。

この記事の概要

開業司法書士の年収の最新データ

司法書士白書

司法書士白書の2021年版に、司法書士の平均年収に関する最新データが載っていますのでご紹介したいと思います。

自分で事務所を運営している司法書士のことを開業司法書士と言います。

その開業司法書士の事務所の平均年収は、およそ1683万円(1683.5万円)となっています。

開業司法書士の平均年収

この数字は、2020年に全国の司法書士にアンケート調査をしたものとなっていますので、その一つ前の年である2019年の収入についてのデータです。

先にことわっておきますと、ここでいう年収とは、事務所を運営するためにかかった経費を差し引く前の売り上げのことです。

売り上げから必要経費を差し引いた後の金額のことを所得と言いますが、この所得については次のトピックでお話します。

さて話を戻しますと、平均年収がおよそ1683万円と言いましたが、事務所によってばらつきはもちろんありますので、その分布がどうなっているか簡単にお話しします。

このグラフが年収の分布図です。(↓)

開業司法書士の年収分布

ざっくりと言いますと、一番ボリュームが多い層は、1000万円から4999万円の年収のゾーンになってます。

売上が1000万円以上の司法書士事務所はけっこう多い

金額だけ見るとけっこう稼いでいるように思えますが、事務所で扱っている業務量がそこそこ多くて、経営者である司法書士以外にも事務員がいるような事務所だと、1000万円を超えてくる売り上げがないと事務員に給料を支払えません。

ですから、1000万円以上の層が多いのは当たり前の結果だと思っています。

その逆のパターンとして、司法書士一人だけで事務員がいないような事務所でしたら、人件費はかかりませんので、家賃などの経費を安く済ますことができれば、数百万円の売り上げでも運営できることになります。

開業司法書士の年収分布その2

司法書士事務所の年収の分布を見ると、年収が1000万円以上の事務所と、1000万円未満の事務所の割合がだいたい半分半分くらいですので、売り上げベースでみるとそこそこ稼いでいる事務所が多いことがわかると思います。

実収入のデータは額面どおりではない

このトピックでは、開業司法書士の事務所の売り上げから、経費を差し引いた後の所得の金額はどうなっているのか?そのことについてお話ししたいと思います。

最初に申し上げますと、開業司法書士の「所得」の平均はおよそ453万円(453.9万円)という数字になっています。

開業司法書士の平均所得

この453万円という数字を見て、どのように感じたでしょうか?

ちなみに、比較対象として日本人全体の平均年収もご紹介したいと思いますが、2020年に国税庁が公表している統計によると、日本人全体の平均年収は 433 万円となっています。

日本人全体の平均年収(2020年)

この日本人全体の平均年収と比べてみると、見る人によって感じ方は異なると思いますが、人並みには稼いでいるようだけど、ものすごく儲かっているようには見えないかもしれません。

平均だけではなく、全体の分布がどうなっているか確認してみましょう。

分布を見ると「所得0円」の層が一番多い

次に、開業司法書士の所得の分布についても少し解説します。

所得金額のどの層が一番多いかといえば、所得が0円の層です。(↓)

開業司法書士の所得分布

全体の17%くらいが0円の層になっています。

0円というのは事務所の売り上げから経費を差し引くと、トントンか赤字になっている事務所ということです。

開業司法書士は自営業ですから、その年の売り上げが少なかったり、経費の支払いが多かったりすると、赤字になることもあります。

所得の分布を全体的に見渡すと、0円から999万円までの層が大半を占めています。

平均所得が453万円くらいになるのも、なんとなく理解できます。(↓)

開業司法書士の所得分布(0ー999万円)

公表された所得金額にはカラクリがある

これを見ていると「なんだか司法書士って儲からない商売だなあ。」と思えるかもしれませんが、この開業司法書士の所得の金額にはからくりがあると私は思っています。

司法書士は自営業がほとんどですので、毎年、税務署に確定申告という手続きをしています。

確定申告というのは、1年間の売上や所得の金額をとりまとめた上で、税務署に納めることになる税額を報告する手続きのことです。

会社員はほとんどの場合、会社のほうで税金の計算や支払いまでしてますので、あまり馴染みがないかもしれません。

ということで、開業司法書士をはじめとする自営業者は、確定申告の手続きを毎年やっています。

確定申告には所得控除という制度がある

税務署は、自営業者に確定申告の手続きを毎年きちんとおこなってほしいと思っています。

そこできちんと確定申告をしたくれた見返りとして、所得の金額を少し減らすことができる「所得控除」という制度を用意しています。

さらに、税金の還付を受けることができる制度もあったりします。

ですから、開業司法書士の所得の平均が453万円という数字を見ても、額面どおりではないと考えられます。

じゃあどんな控除や還付があるかと言えば、ここから少しだけ税金のお話になりますが、個人事務所の例を挙げながら、なるべくシンプルにお話しします。

控除や還付の制度はどんなものがあるか

個人事務所の節税の例

まず、確定申告をきちんとおこなっただけで「申告控除」を受けることができます。

「青色申告控除」とか「白色申告控除」と言われるものです。確定申告をするだけで、所得の金額を数十万円減らすことができます。所得の金額が減ると、かかってくる税金の額も減らすことができます。

「専従者給与」という制度もありまして、これは何かといえば、家族に給料を支払うことで受けられる控除のことです。

家族に給料を支払っても、支払う相手は大抵の場合は夫とか妻のような配偶者です。ですから夫婦間でお金が動くだけで、事務所の外にお金が出ていくわけではありませんので、お得な制度です。

「家事按分」というものもあります。

司法書士が住んでいる自宅が賃貸住宅でしたら、その自宅を事務所との兼用にすると事務所として使っている面積の分だけ家賃として経費にすることもできます。これを家事按分と言います。

「税金の還付」を受けることができる場合もあります。

お仕事の依頼者が会社のような法人の場合、法人から司法書士が報酬を受け取るときには、すでに所得税として10パーセントほど天引きされて支払われています。

この天引きされた所得税のことを源泉所得税と呼びますが、この源泉所得税は、依頼者である法人が司法書士の代わりに納税しています。

ところが、司法書士が税務署に確定申告の手続きをしたところ、報酬から天引きされた源泉所得税が払い過ぎになっていることがよくあります。このような場合、あとで源泉所得税の還付を受けられるケースがあります。

会社員で例えると、年末調整でお金が返ってくる場面をイメージするとわかりやすいかもしれません。

実際の年間所得の金額はもっと多いはず

こんな感じで、見かけ上の所得の金額を減らすことができる「所得控除」の制度や、払い過ぎた税金を取り戻す「税金の還付」があります。

そんな制度をフルに活用していますので、司法書士事務所のほんとうの所得金額は、今回の調査結果である453万円という数字よりは多くなってくるはずです。

これは私個人の考えになりますが、司法書士白書で公表されている平均所得の金額よりも、少なくとも100万円とか200万円くらいはアップするのではないかな?と思っています。

というわけで、開業司法書士の所得の平均という数字を見ると、あんまり儲かっていないように感じる方もいるかもしれません。

でも、実際のところは税務上のいろんな優遇制度を使って、所得の見た目の金額だけを低く抑えていることもあり得ますので、額面通りには受け取らない方が良いと思います。

まとめ

今回は司法書士の平均年収というテーマで

その中で、司法書士白書の2021年版という本に載っているデータによると、開業司法書士の1年間の収入の平均はおよそ1683万円ということがわかりました。

開業司法書士の実収入である所得の金額はおよそ453万円となっていますが、税務申告をするための見かけ上の所得金額が低く抑えている可能性があるため、ほんとうの所得はもう少し高くなるのはずです。

というお話をしました。

この記事を最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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