自分で登記をするときはアナログ申請がおすすめです!
会社登記、不動産登記のことをネットで調べると、法務局の公式ホームページでは「オンライン申請」をイチオシしています。
ですが、「自分で登記申請」するのでしたら、オンライン申請はかえって手間がかかってしまいます。
今回は、オンラインではなく「アナログな書面申請」をおすすめする理由と、申請の手順についてお話しします。
アナログな書面申請ですので、もちろんハンコ(印鑑)も必要です。
この記事の筆者
こんにちは、諌山(いさやま)です。
司法書士事務所を開業して今年で10年経ちました。
日々の業務をおこなっていて、感じたこと、考えたことをブログに書いています。
この記事の概要
アナログ申請をおすすめする理由
アナログな書面申請をおすすめする理由は次のとおりです。
一年間にそんなに何度も登記申請するわけではないのに、オンライン申請をしようとすると、「事前のセットアップ」など面倒な手続きが増えてしまうからです。
それだったら、書面申請をしたほうが手間が少なく済むからです。
以下、オンライン申請をするときに必要なものがどんなものか、述べていきたいと思います。
1.オンライン申請は専用ソフトのダウンロードが必要だから
不動産や会社・法人の登記をオンライン申請するためには、専用のソフトをパソコンにインストールする必要があります。
このオンライン申請用の専用ソフトのことを「申請用総合ソフト」と呼びますが、これはWindows(ウィンドウズ)のパソコンしか動きません。
Apple社のMac(マック)はダメです。
そして、そのソフトを利用するためには利用者情報の登録、つまり「アカウント」を作る必要があります。
その一方で、アナログな書面申請でしたら、紙の申請書に印鑑を押せばすみますので、面倒なセットアップは不要です。
2.オンライン申請は電子証明書が必要だから
申請用総合ソフトでオンライン申請するためには、申請する人や会社が印鑑を押すかわりに、パソコンで「電子署名」をしてから申請する必要があります。
この電子署名をするためには、個人や法人の「電子証明書」というデータを取得しておく必要があります。
個人の電子証明書
「個人」でしたらマイナンバーカードに電子証明書を格納することができます。
個人の電子証明書の有効期限は5年ですので、もし有効期限が切れたら、お住まいの市区町村の役所で更新手続きをしてもらえます。今のところ、これは無料です。(執筆時点)
法人の電子証明書
会社のような「法人」でしたら、法務局という役所であらかじめ法人用の電子証明書のデータを取得してもらって、CDやUSBメモリに入れておくことになります。
法人の電子証明書の取得は有料になっていますのでご注意です。たとえば有効期限3ヶ月間の電子証明書は、今のところ2500円の発行手数料がかかります。(執筆時点)
その一方で、書面申請の場合は、申請書にハンコを押すだけですみますので、書面申請のほうが簡単です。
3.登記申請書は郵送でも構わないから
オンライン申請の制度の“売り文句”として、「自宅や会社でらくらくオンライン申請できる」と謳っています。
ですが、実はアナログな書面申請をする場合でも、わざわざ法務局に出かける必要はありません。
不動産や会社の登記でしたら、登記申請書は郵送でオッケーだからです。
4.申請書と一緒に出す書類は、どうせ紙の書類だから
登記申請をするときには、申請書だけではなくて、申請内容を裏付けるための証明書類を一緒に提出することが大半です。
これを「添付書類」と言うのですが、登記申請書はオンラインで申請できたとしても、添付書類は紙の書類を別途提出しているのが実情です。
結局、どっちにしても、紙の書類を提出することになるので、登記申請書だけオンラインで頑張るのは効率が良くないということになります。
たとえば、会社の登記でしたら、登記の種類にもよりますが、よく必要になるのが株主総会とか取締役会の議事録ですね。これらの書類にも押印が必要になります。
「添付書類」は、今のところ電子化が進んでいませんので、たとえ司法書士であっても、紙の書類を法務局に提出しているのが現状です。
最近になって契約書などに電子署名できるサービスが広がってきましたので、数年後にはどうなっているか分かりませんが、完全オンライン申請ができるようなるまで、まだまだ時間がかかりそうです。
ちなみに司法書士は、お仕事として一年に数十件も数百件も登記申請していますので、効率性重視のためオンライン申請を日頃から使っています。
「司法書士専用の業務用ソフト」というものがありまして、これを民間の会社から購入して使っています。
お値段はとても高い(導入時に数十万円以上)ため、頻繁に使う人以外は、コスト倒れになります。
「QRコード付き書面申請」も書面提出が必要です
書面申請の方法はもうひとつありまして、「QRコード付き書面申請」という方法もあります。
QRコード付き書面申請は、オンライン申請するための「申請用総合ソフト」を使って申請するのですが、「電子証明書」を使って電子署名をする必要がありません。
そのかわり、オンラインで申請した登記申請書を「紙に印刷」して、法務局に提出するというものです。
なお、印刷した登記申請書にはQRコードが記載されていますので、それで「QRコード付き書面申請」と呼ぶのです。
正直なところ、申請用総合ソフトでオンラインから申請して、そのあと印刷した登記申請書を法務局に提出するわけですから、二度手間感はありますね。
ご参考:法務省HP「QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について」
自分で書面申請するときの手順は?
オンライン申請のセットアップなどの手続きが面倒な人には、これまでの通りの書面申請をおすすめします。
手続きの流れは次のようなものになります。
1.法務局のホームページで書類をダウンロードできます
登記申請書と、それに一緒に提出する書類のひな形は、法務局のホームページでダウンロードすることができます。
不動産の登記、会社の登記に分かれていて、その中でも登記の種類ごとにパートが分かれています。
あなたが申請したい登記を選んで申請書類をダウンロードすることができます。
あなたの使っているパソコンの環境にあわせて、「PDF」・「Word(ワード)」・「一太郎」といった数種類のファイル形式でダウンロード可能です。
Windowsで動いているパソコンでしたら、Wordファイルをダウンロードして、申請書などを作成することになるはずです。
ご参考:法務局HP「不動産登記申請手続」・「商業・法人登記申請手続」
2.登記相談で事前にわからないことを聞けます(要予約)
登記申請する前に、いったん作った書類を持って、「法務局で相談」をしておくことをおすすめします。
登記申請書などはダウンロードできますが、どのように記入したらいいのか、わからない場合もあると思います。
そんなときは、法務局で登記相談をすることができます。
事前予約制になっていますので、電話して予約しましょう。
地域によっては電話相談窓口もあります
あなたが住んでいる地域の法務局によっては、「電話相談窓口」が開設されているところもありますので、次のような大まかな質問でしたら、答えてもらえます。
たとえば、
- そもそもどのような登記をすればいいのかわからないとき
- どこの法務局が申請先になるのか管轄を教えて欲しいとき
ご自分で登記するのでしたら、法務局の相談窓口を活用することをおすすめいたします。
3.登記申請は法務局に持参しても、郵送でもできます
書面申請は「郵送」でも可能です。
もちろん、法務局の窓口に自分で出かけて提出(「持参」)することもできます。
ほとんどの場合、法務局は提出された申請書類を審査するだけですので、郵送だから審査が厳しくなるとかそんなことはありません。
というわけで、書類の提出のために、法務局に出かけるのが面倒な方、人混みが苦手な方は、郵送で出してしまいましょう。
まとめ
繰り返しになりますが、一般の方でしたら1年に何度も登記をすることは、あまりないと思います。
頻度が高くないのでしたら、オンライン申請に無理にチャレンジするのは、時間の浪費になってしまうかもしれません。
昔ながらの方法になりますが、書面申請をしたほうがタイムロスが少ないということになります。
最近は、「行政手続きのデジタル化・電子化」が徐々に進みつつありますが、まだまだ時間がかかりそうなのが現状です。
たまに登記申請する程度でしたら、紙の書類を作って、ハンコを押して申請する「アナログな方法」が、実は、手間が少なくて時間がかからない、ということになります。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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