最安値で株式会社を設立する方法について司法書士が考えてみた
「株式会社を設立したいけど、自分で全部したほうが良いのか?それとも専門家に頼んだ方が良いのか迷っている。」
「専門家に依頼するとしても司法書士とか行政書士、税理士とかいるけど、どの専門家がいいのだろうか?」
そんなお悩みにお答えいたします。
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この記事の筆者
司法書士事務所を開業して今年で10年経ちました。
日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことをブログで述べています。
この記事の概要
「削れる実費」と「削れない実費」があります
株式会社の設立登記をするための実費について、一覧表にしてみました。
項 目 | 金 額 |
---|---|
定款に貼る収入印紙 | 4万円 |
定款認証手数料 | 約5万円 |
登録免許税 | 15万円〜 |
会社謄本(登記事項証明書) | 600円(1通) |
会社の印鑑証明書 | 450円(1通) |
この中で、どうしても省くことができない実費として、定款認証手数料約5万円と登録免許税15万円があります。
この2つの実費は絶対にかかる費用ですので、最低でも20万円程度はかかります。
なお、定款に貼る収入印紙代4万円は、節約できます。
個別の項目の解説は、以下のとおりです。
- 定款に貼る収入印紙代・・・4万円
- ただしこの印紙代4万円は、定款を「電子定款」で作成すると節約できます。電子定款については後でお話しします。
- 定款認証手数料・・・5万円ほど
- 公証役場にいる公証人に支払う手数料です
- 登録免許税・・・15万円から
- 会社の設立登記を申請するときに法務局に支払う税金です。
登録免許税は、設立する会社の資本金の額に0.7%をかけた金額になりますが、最低額が15万円と決められていますので、だいたい資本金の額が2100万円以下でしたら、登録免許税は15万円になります。。
- 会社の設立登記を申請するときに法務局に支払う税金です。
- 会社謄本(登記事項証明書)・・・1通あたり600円
- 設立登記したあとに取得することができます。会社の登記内容が記載された法務局発行の証明書です。
- 会社の印鑑証明書・・・1通あたり450円の取得費用
- 会社の代表者である代表取締役が法務局に届け出た印鑑について、法務局が発行した印鑑証明書です。
電子定款にすると印紙代4万円を節約できます
定款認証と、それをするためにかかる費用について、もう少し詳しいお話をします。
定款というのは「会社の基本規則を定めた書類」になります。
株式会社を設立するときは、かならず作成する書類になります。
会社の商号(つまり会社の名前)とか、会社の所在地、事業年度(何月末を決算期にすること)など、いろいろなことを定めて記載します。
認証手続きには手数料、紙の定款は印紙代も
株式会社を設立するときは、公証役場というところで公証人の認証手続きを受ける必要があります。
定款が正しく作られているか公証人に確認してもらって、お墨付きをもらう手続きです。
株式会社の場合は、設立登記を申請するときに、定款認証を受けた定款を付けていないと、登記が却下されてしまいます。
ですから定款認証の手続きはどうしても受けなれけらばいけない手続きなのです。
定款認証の手数料は5万円程度ですが、これは公証役場に支払う手数料です。
これとは別に、定款を紙の書類として作った場合は4万円の収入印紙を買ってきて、定款の所定の位置に貼り付ける必要があります。
だから、定款を紙の書類で作って、公証役場で定款認証の手続きを受ける場合は、およそ9万円かかります。
定款に貼り付ける印紙代は節約できる
先ほどからお伝えしているとおり、定款認証の手続きで何が節約できるかと言えば、定款に貼り付ける4万円の印紙代ですね。この4万円を節約しようと思えばできます。
「電子定款」という、定款のPDFデータに電子証明書でデジタル署名をしたものを作れば印紙を貼らなくてよくなりますので、4万円の節約です。
自分で電子定款を作るのは大変
印紙代4万円を節約するために、電子定款を作成すれば良いことはわかりました。
ただし、先に申し上げておきますと、電子定款の作成環境を自分で整えると、機材の購入とパソコンのセットアップで、費用と手間がかかります。
というのも、電子定款は自分でやろうとすると、カードリーダーとかPDF作成ソフトを用意する必要がありますが、これだけでも数万円別途かかります。
また、電子定款を作成するために、パソコンにも電子署名用のソフトウェアをダウンロードしてセットアップする手間も必要になってきます。
正直なところ、一般の方がこれらの準備と設定をするのはかなり面倒です。
というわけで、電子定款の作成だけでも「専門家の手」を借りたほうが得策だと思います。
専門家は電子定款を日常的に作成していますので、いいソフトといい道具をすでに持っています。
専門家の手も借りたくないし、自分で面倒なセットアップもしたくない方は、ここは開き直って、定款を紙の書類で作成して、収入印紙4万円を定款に貼るということになります。
専門家に依頼する場合、「じゃあどんな専門家の手を借りることができるのか?」それについては、つぎの項でお話しします
三種類の専門家に依頼するメリット・デメリット
ということで、株式会社の設立登記をするまでの費用の中で、一番の問題は「定款に貼る収入印紙代4万円」ということがお分かりいただけると思います。
それで電子定款を作成してもらえる「専門家の手」を借りる場合のメリットとデメリットについて述べていきます。
ここで登場する専門家は、行政書士、税理士、司法書士です。
行政書士
まず最初に、行政書士という専門家をご紹介します。
行政書士というのは、ざっくりと言いますと「官公庁に提出する書類の作成をしてもらえる法律の専門家」ということになります。
インターネットなどで、お近くの行政書士の事務所を検索すると、それなりの数が検索結果に出てくるはずです。
行政書士に、定款認証の手続きの代行をしてもらえます。
もちろん電子定款の作成もできますので、収入印紙代4万円は節約できます。
行政書士に依頼するメリットは、なんと言っても費用の安さです。
電子定款の作成と定款認証の手続き代行は、だいたい1万円から2万円くらいでやってもらえるところが多いです。
もちろん事務所によって、費用にばらつきはありますので、気になる事務所を見つけたら行政書士の報酬がいくらなのか、よく確認してから依頼したほうが良いです。
デメリットとしては、定款認証の手続きが終わったあとの「設立の登記申請」の代理まではやってもらえませんので、そこは依頼者が自分で登記申請することが基本になります。
税理士
次に税理士ですが、税理士はその名前のとおり税務の専門家で、税務申告や記帳の代行などをメインの業務です。
ところが、インターネットで税理士事務所とか会計事務所を検索すると、「会社設立の手続き」をサービスとして取り扱っているところが数多く見つかります。
税務の専門家である税理士が、定款認証の手続きをしていますが、これには理由があります。
税理士であれば行政書士として登録することもできるため、その登録をして、行政書士の業務も取り扱えるようにしている事務所があるからです。
ちなみに、税理士事務所では、電子定款作成の報酬は格安もしくは無料のところがほとんどです。ここが最大のメリットです。
事務所によっては定款認証手数料や登録免許税といった実費も一部負担してもらえるところもあります。
一見すると夢のようなサービスで、本当に格安で会社設立できるのではないかと思ってしまいます。
もちろん、これにはカラクリがあります。
会社設立登記のためにかかる報酬は「タダ同然」にするのと引き換えに、その税理士事務所と1年間とか2年間といった一定期間の「税務顧問契約」を締結することが条件となっているのです。
これがデメリットといえばそうなります。
税理士と契約されている方はご存知だと思いますが、月々の顧問料と、税務申告をするときの報酬がかかります。
会社の事業の内容や売り上げの金額にもよりますし、事務所によって報酬はピンキリですが、ふつうは年間数十万円はかかりますので、その点はご注意ください。
最初から顧問税理士に頼む人には良いことかも
会社を設立した後で依頼する税理士がまだ決まっていない方でしたら、設立登記の費用がとりあえず格安・無料になりますので、良いサービスかもしれません。
もっとも、全ての税理士事務所が設立登記の手続きを取り扱っているわけではありません。
お知り合いの税理士が会社設立を取り扱っていない場合もあります。
そのときは、その税理士の先生と提携している行政書士とか、司法書士を紹介される場合がありますので、その点もご留意ください。
司法書士
司法書士は、「電子定款の認証」も「設立登記の申請」のいずれも依頼者の代理人として業務をすることができます。
つまり、会社設立登記の手続きについてフルサービスを受けることができます。
司法書士に依頼するメリットは、定款認証と設立登記の申請の手続きについてまとめて依頼できることです。
デメリットと言いますか、当たり前のことになりますが、サービスが良いだけ、その分報酬は高くなることが多いです。
司法書士の報酬は自由化されていますので、事務所によって報酬額はまちまちですのです。
日本司法書士会連合会が公表している司法書士報酬アンケート結果という資料によると、およそ5万円から19万円とかなりに幅があるようです。
実際の報酬額がいくらになるかは、依頼しようと思っている司法書士事務所にお問い合わせください。
とはいえ、手をかけずに、スピーディに会社を設立したい方でしたら、最初から司法書士に依頼することもご検討ください。
オンラインで書類作成できる有料サービスもあります
あと、最近はオンラインで会社設立登記の書類を、自分で作ることができる有料サービスを提供している業者がいくつかありますが、あくまでも書類作成サービスです。
定款認証の手続きは自分でやるか、行政書士などの専門家に依頼することになります。
でも、このようなオンラインサービス提供会社は、だいたいの場合は、電子定款の作成と認証手続きのところは、提携している外部の行政書士に依頼することができる仕組みになっていることが多いです。
オンラインで書類作成できるサービスを提供している会社はつぎのようなところがあります。
リンクをクリックすると、公式ホームページを見ることができます。
会社設立するときに決めておくこと
会社設立したいと思ったら、どこに相談するにしても、これからご紹介する内容は、決めておいたほうがいいです。そのあとのお話がスムーズにすすみます。
最終的には、会社を設立するために決めておく必要が出てくるからです。
決めておくことを一覧にしますと、つぎのとおりです。
決めておく項目 | かんたんな説明 |
---|---|
商 号 | 会社名のことです。 |
本 店 | 会社の住所のことです。 |
目 的 | 会社の事業目的も登記事項です。 |
会社の広告方法 | 官報、日刊新聞紙、電子広告のどれか。 |
資本金の額 | 1円以上でOKです。 |
出資者の住所・氏名・出資額 | だれが、いくら出資するのか決めます。 |
役員の住所・氏名 | 取締役はかならず置きます。取締役が複数いるときは代表取締役も決めます。 |
事業年度 | 何月を決算月にするのか決めます。 |
会社設立するために決めておくことについて、もう少しくわしい解説をすると、以下のとおりです。
- 商号
- 会社名のことです。
株式会社でしたら商号のどこかに株式会社という文字を入れる必要があります。商号にはローマ字(例:ABC・abc)も使うことができます。
- 会社名のことです。
- 本店
- 会社の住所のことです。
自宅や事務所をお持ちの方でしたら、すでに会社の住所は確保できていますので、それで良いのですが、これから賃貸で事務所を借りる方は、賃貸契約を締結してから、設立登記をしたほうリスクが少ないです。
というのも、設立登記をしてから、やっぱり事務所の賃貸契約ができなくなって、その後、会社の本店所在地を変えようとすると、本店移転登記という登記をすることになります。
本店移転登記もするとなると、これには少なくとも3万円以上の費用が別にかかりますので、そうならないように、先に会社の住所を確保してから、設立登記をすることを強くおすすめします。
- 会社の住所のことです。
- 目的
- 会社の事業目的は登記事項です。
設立後すぐに行う事業はもちろん決めておきますが、将来するかもしれない事業でもあらかじめ登記することはできます。
- 会社の事業目的は登記事項です。
- 会社の公告方法
- 主に会社の決算公告をどのメディアに掲載するのか、その方法を定める必要があります。
官報、日刊の紙聞あるいは電子公告のどれかになります。迷ったら官報を公告方法にしておけばとりあえずはOKです。
- 主に会社の決算公告をどのメディアに掲載するのか、その方法を定める必要があります。
- 資本金の額
- 当初、会社が活動するための資本金の額になります。
法律上は資本金は1円以上あれば大丈夫ですが、たいていの場合は数十万とか100万円くらいは準備することが多いです。
- 当初、会社が活動するための資本金の額になります。
- 出資者の住所・氏名・出資額
- 誰がいくら出資するのか決めます。
複数の出資者がいるのでしたら、通常は出資額が多い人に、会社の株式が多く割り当てられますので、誰が過半数を握るのか、会社の支配権に影響してきます。そういうことから、出資額の割合について気にする方は注意したほうが良いと思います。
- 誰がいくら出資するのか決めます。
- 役員の住所・氏名
- 取締役は必ずおくことになる役員になります。
取締役が複数いるのでしたら誰が代表者つまり代表取締役になるのか決めておきましょう。
- 取締役は必ずおくことになる役員になります。
- 事業年度
- 事業年度末のことを一般的には決算月とも言いますが、この決算月を何月にするかによって、法人税の申告時期も決まってきます。
最初の事業年度末は、会社の設立日から1年以内に設定しておく必要があります。
設立登記を申請した日が会社の成立日になりますので、たとえば1月設立で2月末日を事業年度末にすると、ほとんど事業をしていないのにすぐに法人税の申告をしなければいけなくなります。
1月に設立するのでしたら、たとえば11月とか12月を事業年度末にするようにしておけば、すぐに事業年度末が来ることを避けることができます。
- 事業年度末のことを一般的には決算月とも言いますが、この決算月を何月にするかによって、法人税の申告時期も決まってきます。
ということで、会社設立するときに決めておくことについて、いろいろとお話をいたしました。
設立登記を自分で全部する場合でも、登記を申請する法務局には相談することになると思いますし、専門家に依頼するにしても、先にだいたいのことを決めておけば、そのあとの話し合いとか手続きもスムーズに進みます。
まとめ
というわけで今回は、
というお話をいたしました。
この記事を最後までご覧いただきましてありがとうございます。
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