司法試験と司法書士試験はぜんぜん違うものです【解説】

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こんにちは、諌山(いさやま)です。

2009年に司法書士として活動をはじめて、もう10年以上経ちました。

これまで「司法書士って司法試験を合格してるんでしょ?」という質問を何回も受けてきました.。

「司法試験と司法書士試験は違うものなのでしょうか?なにが違っているのでしょうか?」

こんな疑問にお答えいたします。

この記事の概要

資格によってできることが違う

弁護士は裁判の専門家です

司法試験に合格して、司法修習という研修を終えて、もう一回試験に受かると、弁護士として活動することができます。

弁護士ではなく、裁判官(判事)や検察官(検事)になりたい場合は、最高裁判所・法務省に応募して採用された人がなることができます。

弁護士といえば、裁判所で依頼者に代わって喋ってくれる人というイメージがあるかもしれませんが、ほぼそのとおりです。

そのほかにも、裁判所の法廷に立つだけではなく、
法律上の争いごとを抱えた人や会社から依頼を受けて、紛争の相手型と交渉したりもします。

いろんな事件が弁護士の業務になります。

法律に関する事務はオールマイティーで行うことができます

弁護士は、税理士・行政書士・社会保険労務士としての業務をすることが認められてるぐらいオールマイティーです(あんまりやっている弁護士はいないですが)。

裁判だけではなくて会社の法務なんかもする弁護士事務所もあります。

会社で使う契約書を作ったり、会社の合併などの再編を手伝ったり、そんなことをしている事務所もありますね。

企業と月額いくらで顧問契約を結んで、長いお付き合いをしている弁護士は多いです。

この場合、ちょっとした法律相談は気軽に応じてもらえるメリットがあります。

とはいえ、法律問題で困った人に代わって交渉したり、裁判をしてくれる専門家のイメージでだいたい間違いはありません。

司法書士は登記の専門家です

司法書士は、かんたんにいえば登記の専門家です。

「不動産登記」と「商業登記」を、依頼者に代わって役所に申請する仕事ができます。

「不動産登記」というと、お家を買ったときの名義移転登記がよくある登記です。
それ以外にも、不動産を担保にして銀行から融資を受けるときや、不動産の所有者が亡くなって相続登記をするときにも司法書士の出番はあります。

「商業登記」とは、会社や法人の登記のことです。
会社を設立するとき、役員を変えるとき、本社を移転するとき、会社の名前を変えたいときに、登記をする必要があります。

ほかにも、裁判所に提出する書類の作成もできます。
弁護士のように、裁判手続き全般を依頼者の代理人としておこなうことはできないですが・・・ただし↓↓

認定試験に合格した司法書士は、簡裁代理権が与えられます

簡易裁判所で活動するための研修を受けて、認定試験に合格した司法書士(認定司法書士)は、簡易裁判所に限って弁護士のように依頼者の代理人として活動することができます。

簡易裁判所とは、民事の争いでしたら140万円以下の比較的小さい金額の事件を取り扱う裁判所のことです。

いろいろ司法書士のできることについてお話ししましましたが、
「司法書士=登記の専門家」です。

試験を受けるまでのプロセスが違う

段階を踏む

【弁護士】司法試験を受けるまでの期間とお金

弁護士になるための試験が司法試験ですが、この試験を受けるためには、いくつかの関門があります。

いつでも誰でも受けることができるわけではありません。

まず、原則として4年制の大学を出ていることです。

さらに、法科大学院(いわゆるロースクール)に通って法律の勉強をすることが義務付けられています。

通学する期間は、大学の法学部卒業生は最低でも2年間、法学部以外の卒業生は最低3年以上となっています。

法科大学院を卒業していることが、司法試験を受けるための前提条件になっています。

法科大学院に通わない「予備試験」という別ルートもありますが、鬼のような難しさ(合格率約3%)です。

というわけでふつうは法科大学院に2年以上通って、着実に受験資格を獲得するルートを選ぶ人が大多数です。

法科大学院(ロースクール)の学費はどれくらい?

現在、学生を募集している法科大学院は全国に36校あります。

関連リンク:法科大学院ガイドHP「全国法科大学院一覧

国公立・私立のいろいろな大学が母体となって運営していますが、通うためには授業料がかかります。

国立はどこも一緒で、初年度で約1,086,000円、2年目は約804,000円です。
(2020年度のデータ)

私立は、大学によってまちまちですが、おおむね毎年140万円前後はかかるのが実情です。

例えば慶應義塾大学の法科大学院(専門職大学院法務研究科)の場合、初年度1,682,240円、2年目は1,582,140円となっています。
(2020年度のデータ)

結構お高いですね。

奨学金制度は各大学が用意していますので、一時的なお金の負担を軽くすることはできますが、奨学金も借金の一種ですので、弁護士として働き出してから少しずつ返済をすることになります。

法科大学院を卒業すると、司法試験を受験できる

法科大学院を卒業すると、ようやく司法試験の受験資格を得られますが、卒業から5年以内に合格しないと受験資格を失ってしまいます。

司法試験に合格すると、約1年間の司法修習という法定の研修を受けることになり、その最後に考査(いわゆる「二回試験」)を受けて、ようやく弁護士として登録することができます。

裁判官や検察官になりたい人は、最高裁判所や法務省に応募して、採用されるとなることができます。

【司法書士】司法書士試験は学歴関係なしの一発試験

司法書士試験は、誰でも学歴も関係なく受験できます。

年1回の試験で決まります。法科大学院に行く必要はありません。

試験を受けるための受験料以外のお金は基本的にかかりません。

ただし、完全に独学で合格する人は少数派です。

法律の条文を知っているだけでは合格は「できません」。
司法書士試験で問われるポイントに焦点をあてた対策が必要になります。

本気の受験生はがっつりと試験対策してます

受験生のみなさんは、なんらかの試験対策をして、合格のための準備をしています。

お金がかかるとすれば、この試験対策で書籍を買ったり、講義を受けたりするところですね。

テキストや問題集は一冊あたり数千円ですが、講義の受講料はサービス提供している会社によってまちまちです。

最近は費用がお安めの「オンライン」で通信資格講座を提供しているサービスもいくつかありますので、試してみるものいいかもしれません。

司法書士試験合格後は、研修が待っています

司法書士試験に合格すると、司法書士会などの団体が研修を用意しています(有料)。

ここで同期のお友達がたくさんできます。

研修を受けなくても司法書士として登録はできるのですが、都道府県によっては研修を受けることが「事実上の登録の条件」になっているところもありますので、ご注意ください。

司法書士特別研修を受けて簡裁代理権を取得できる

司法書士会などの研修とは別に、「司法書士特別研修」というものがあります。

約100時間の特別研修を受けて、考査(試験)に合格すると・・・
     ↓ ↓ ↓
簡易裁判所で依頼者の代理人として活動するための権限(簡裁代理権)を獲得できます。

司法書士の2階建ての資格という位置付けになります。

すべての司法書士(約22,000人)の77%が簡裁代理権の認定を受けています。
(日本司法書士会連合会HPより・2020年4月1日現在のデータ)

債務整理の案件をたくさん取り扱う事務所に就職したい司法書士でしたら、必須の認定資格になります。

本当に100時間みっちり研修を受けますので、手応えありますよ。
特別研修でもお友達がたくさんできます。

受験科目と内容が違う

ゴールイン

【弁護士】司法試験はやっぱり論文試験ですよね

弁護士になるための司法試験は4日間かけて行われます。

論文試験が3日間、短答試験が1日間になります。
かなりの長丁場ですね。

試験科目は、つぎのとおりです。
基本となる六法(憲法・刑法・民法・商法・刑事訴訟法・民事訴訟法)
選択科目1科目(労働法・倒産法・知的財産法・経済法・租税法・環境法・国際関係法(私法系)・国際関係法(公法系))

短答試験は5つの選択肢からひとつを選ぶ答え方になりますが、論文試験は与えられた問題について、文章を答案用紙に書いていく方式になります。

条文だけではなく、主要な判例や学説なども頭に入れているのは当然です。

重要なことは、問題文に出てきた「具体的な事例」に、「法律・判例など」をどのように当てはめることができるのか、自分なりの回答を書くことです。

まさに「裁判でこちらの主張をどう展開していくのか」という、弁護士になるための基礎が問われれている試験ですね。

【司法書士】司法書士試験には登記法がある

司法書士試験ですが、試験は1日で終わります。

試験科目は11科目です。
憲法・民法・商法(会社法)・不動産登記法・商業登記法・刑法・供託法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法

「択一式」の問題と「記述式」の問題が出されます。

司法書士試験で大きな特徴となっているのが、不動産登記法と商業登記法の「記述式」の問題です。

かんたんにいうと「登記申請書の作成」をすることが、試験内容の一部になっているのです。

登記の実務家を養成するための試験、という性質が試験内容にはっきりと現れていますね。

たんに条文や判例の知識だけではなく、法務省の通達などの実務先例の知識も問われますので、合格のためにはそれなりに「厚く」広く学習することになります。

とはいえ、周りの司法書士の方を見ていると、みんな天才肌の人ばかりかといえば、筆者も含めてわりとふつうの人が多いです。

学生の頃から勉強一筋というよりは、社会人になってから司法書士試験の勉強をはじめて、数年かけて合格したようなタイプが多数います。

これは合格者の平均年齢が40.08歳(平成31年度)であることからもわかります。

天才だけが受かるわけではなく、むしろコツコツ努力するタイプが合格できる試験ですよ。

まとめ

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

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