いまさらですが【新司法書士試験】について司法書士が解説します

新司法書士試験

昨年(2020年)、「新司法書士試験」というワードが、一時期話題になっていたようです。

今回は、その「新司法書士試験」というワードは、どこから出てきた言葉なのか?実現性はどれくらいあるのか?

司法書士がわかりやすく解説します

この記事の筆者

司法書士事務所を開業して今年で10年経ちました。

日々の業務をおこなっていて、感じたこと考えたことをブログで述べています。

この記事の概要

新司法書士試験というワードは提言にすぎません

昨年、新司法書士試験というワードが、司法書士試験の受験生の間で一部話題になりました。

ツイッターなどのSNSでも、司法書士試験に関心がある人たちの間で、ちょっとした話題のワードになっていたようです。

ご存知の方も多いかもしれませんが、この新司法書士試験という言葉が出てきたのは、日本司法書士会連合会が出版している「THINK(シンク)」という雑誌。

筆者は司法書士なので、この本は持っています。

雑誌THINK

これは毎年、司法書士会から送られてきます。

このTHINKという本ですが、何が書いてあるかといえば、司法書士に関係する「研究論文」とか「研究発表」が載っている雑誌です。

読んでみると文字がぎっしりで、読み応えは抜群です。

3つの提言が発表されています

最終報告書のタイトル

2020年に発行されたTHINKに、「司法書士養成制度検討会」の「最終報告書」という文書が載っています。

この検討会のメンバーには、法科大学院いわゆるロースクールの教授とか、弁護士、司法書士が名前を連ねています。 

この最終報告書に、新しい司法書士の養成制度について提言がされています。大きく分けると3つの養成制度です。

(これら3つの項目は、あくまでも提言です。)

一つ目は新司法書士試験と科目免除。

二つ目は、合格者が登録前に受ける養成制度

三つ目は、すでに登録している司法書士の継続研修

この三つについて、「法科大学院(ロースクール)」などを活用して、司法書士を養成する新しい制度ができないか?という提言です。

この報告書の中でページ数をもっとも使っているのは、二つ目の「合格者が登録前に受ける養成制度」のことです。

「新司法書士試験」については10行くらいしか書いてありません。

最終報告書の抜粋
*著作権に配慮しています

たぶん、みなさんが一番関心があることは何かといえば、「新司法書士試験」のことだと思いますので、内容をわかりやすくお話しします。(↓)

新司法書士試験の内容とは?

この本に書いてある「新司法書士試験」は、次のとおりとなっています。

(上記の内容は、今のところ提言にすぎませんので、あまり真に受けないほうが良いです。)

筆者もこの記事をよーく読んでみました。

そこで、結論を先に言いますと、

将来、たとえば、今年(2021年)とか来年、あるいは再来年ころに司法書士試験の制度がガラッと変わる可能性があるのか?といえば、限りなくその可能性は低いと思います。

というのも、司法書士養成制度検討会のこの最終報告書は、2016年6月に出てきたものですが、そこからすでに4年以上経っているからです。

しかも、今のところお話は全然進んでいません。

2019年に、司法書士法は一部改正されていますが、試験制度に関する部分はまったく法改正の対象となっていません。

4年以上経っても音沙汰なしですから、万が一、これから新司法書士試験構想を進めていくとしても、法改正が必要なお話ですので、まだまだかなりの年月がかかることが予想されます。

司法書士業界の運動方針でもない

政治連盟トップページ

最初に、新司法書士試験というワードは「司法書士養成制度検討会」という組織が出した提言にすぎない、というお話をしました。

ちなみに、司法書士業界の今後の運動方針はどうなのかといえば、司法書士試験制度の改革は、ほとんど求めていないようです。

司法書士業界にもいろいろな団体があるのですが、その中に「日本司法書士政治連盟」という司法書士の関連団体があります。

この政治連盟は、司法書士に関する法改正について、国会議員などに働きかける活動をしています。

政治連盟の運動方針を見ると、司法書士業界としてどんな法改正を望んでいるのか、一番わかりやすく書いてあります。

運動方針に新司法書士試験の要望は無い

運動方針は政治連盟のホームページに掲載されています。

その運動方針を見たところ、最新のものは2020年7月に決定された運動方針です。

その方針の中の「司法制度改革への継続的取り組み」という項目のところに「登録前研修の義務化」について書いてあります。

しかし、ここでも試験制度の改革は運動方針になっていません。

運動方針の抜粋
司法書士政治連盟HP・運動方針(抜粋)

ちなみに、登録前研修の義務化とは・・・

(このセクションは、ざっと流し読みでオッケーです)

ちなみに、司法書士試験に合格した人が、司法書士として業務をしたいと思いましたら、日本司法書士会連合会という団体に登録する必要があります。

入会金とか、毎月の会費もかかりますが、とりあえず登録しないと司法書士業務はできません。

あと、試験の合格者を対象とした研修というのは、司法書士会などで実施はされていますが、研修を受けること自体は、今のところ義務ではありません。

そうなると、試験だけ受かって実務経験が乏しい人まで、今のところ司法書士として登録して、業務しても構わないということです。

それならば、きちんと研修を受けてから、その後で司法書士の登録をしてもらいたい、そのための法改正を目指していこうという運動方針ですから、まあまあ理解はできます。

「新司法書士試験」は要望していない

というわけで、業界としては、「試験に合格した人が、司法書士登録する前に研修を受けることを必修化して欲しい。」という要望は出しています。

ですが、

「新司法書士試験を実施して欲しい」とか「法科大学院の卒業生は試験科目の一部免除をさせてあげたい」なんて要望は、特に出していないようです。

最後にまとめたいと思います。

まとめ

最後までこの記事をご覧いただきましてありがとうございました。

もしよろしければ、関連記事をもう一つ読んでいただければ、うれしいです。

関連記事はこのページの下のほうにあります。

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