司法書士オワコン説について考察してみる【リーガルテックの出現】

司法書士オワコン説

「司法書士ってオワコンだという人がいるけど、もう稼ぐことはできない資格なのかな?実際のところはどうなんだろう」

この記事の筆者

こんにちは、諌山(いさやま)です。

2010年に司法書士事務所を始めてから10年が経ちました。

登記、企業法務の案件はけっこう取り扱っています。

この記事の概要

司法書士オワコンってなに?

「オワコン」とは、終わったコンテンツの略称のことです。ここでは、職業として終わりが近づいているのではないか?という意味で使います。

司法書士のオワコンについては、つぎのとおり二つの意味があります。

  1. 司法書士が取り扱う仕事のパイ自体が減っているという意味。
  2. 司法書士に頼まなくても、登記などの手続きを自分でする人が増えている(はず)という側面です。

大まかな状況はどうなのか?

近年の登記統計(2019年度)を見ていますと、

不動産登記の総数は約1,208万件、商業登記は約124万件となっています。

最近の10年間の登記件数は、年度によって増減はあるものの「ほぼ横ばい」の推移です。

つまり日本全国レベルで見ると、たいして登記の案件数は変わっていませんよ!ということになります。

ただし近年は、AI(人工知能)技術の発達とともに、リーガルテック(リーガル+テクノロジー)が進歩しました。

いまのところ、おもに法律関係の書類を自動作成してくれるウェブサービスが代表格ですが、司法書士も一部の業務について影響を受けています。

そんな司法書士業界の周辺状況ですが、とりあえず現在はどんな感じになっているのか、事務所を運営している司法書士の目線でお話しします。

影響が大きく受けることになる業務はどんな内容だろうか?

会社・法人の登記は自分でする人が増える?

会社といえば、代表的なものとして株式会社、有限会社、合同会社などがあります。

これまで司法書士がクライアントの代理人として、登記申請する機会は多かったのですが、自分で調べて申請書を作成したり、書類作成の作業だけを外部サービスに頼める環境が整いつつあります。

たとえば、法務局のホームページがここ数年間でかなり親切な作りになってきました。ご親切なことに、設立とか役員変更などのメインどころの登記申請書類のひな形が用意されています。

それ以外にも、登記申請書類の作成サービスを提供する会社が複数現れてきました。

その中でも最近わりと目にするところがAI-CON登記ですね。

AIを活用して、効率よく登記申請書類を作成してくれるサービスです。有料ですが、専門家に支払う報酬よりは低い金額が設定されています。

もちろん登記申請の代行まではしてもらえませんので、自分で法務局に提出する手間は要るのですが、フルサービスはいらないので安く済ませたい人には良いサービスかもしれません。

ほかにも、オンライン会計ソフトを提供している会社が、おまけのサービスとして会社設立登記の書類作成ができるシステムを無料で提供しているところもあります。

有名どころだと会社設立freeeでしょうか。

このようなオンライン会計ソフト系の会社は、会計ソフトの利用料金で利益が出ればいいので、おまけ機能として提供しているところが多いのです。

このように、リーガルテックの普及によって、難易度が低めの登記は、専門家に頼まない人が増えてきそうな環境が整いつつあります。

不動産登記はオワコンじゃない

市場のパイがほとんど増えていない現状を考えると、ある意味オワコンなのかもしれません。

ですが、不動産登記の手続き全部を、司法書士抜きでできるかといえば、そんな簡単にはいきません。ぜんぜんオワコンじゃないです。

住宅ローンを完済したときの「抵当権抹消」とか、単純な「相続登記」といったものでしたら、自分で調べて時間をかけられるのでしたら、専門家に頼まずに自分でやってしまう人もいます。

その一方、不動産の売買だと、売主と買主という利害がぶつかる当事者が存在しますので、司法書士の関与なしに進められるケースはとても少ないですね。

というのも、不動産の取引というものは、多かれ少なかれそれなりのお金が絡みますので、物件の所有名義を買主に変える登記は、専門家にちゃんとやってほしいニーズが無くならないからです。

いまのところ、不動産仲介業者や司法書士の役割にとって代わるようなテクノロジーは普及していませんので、当分の間はオワコンにならない実感は持っていますね。

以前の記事(【不動産×ブロックチェーン】司法書士に迫るバッドエンド・シナリオ)でも述べたことがありますが、不動産取引や登記をテクノロジーの力で効率化する「不動産テック」は、開発・実証段階までたどり着いているようです。

ですが、業界標準として普及するまでは、法律の改正も含めてめちゃくちゃ時間がかかりそうですね!・・という段階でとどまっているのが現状です。

企業法務の一部はリーガルテックの影響あり

企業間での様々な取引を行うときに使われる契約書がありますが、このような契約書のレビューとかリーガルチェック的な作業は、徐々に自動化が進むことが予想されます。

すぐにオワコンになるわけではありませんが、じわじわと効率化が進むでしょうね。

契約書作成に関する業務がオンラインサービスで便利になると、これまで、外部の法律専門家(弁護士とか)に依頼する機会が減ってくる、そんなことが考えられます。

もうすでにそのようなサービスは世の中に存在していまして、よく見かけるのが「AI-CON」とか「Legal Force」といったオンライン系の法務支援サービスです。最近、活発に宣伝活動をやっていますね。

定型的かつ難易度がそれほど高くない契約書だと、これまで通りの報酬を得ることができなくなるかもしれませんね。

成年後見業務はどうなのか?

当分、オワコンになりません。

司法書士が取り扱う業務の中に、成年後見業務がありますが、後見人の就任件数は年々伸びています。

そして、成年後見人の業務は、本人のために生活、療養看護および財産の管理に関する事務をおこないます。

財産管理や医療や介護のための手続きを本人に代わってするなど、多岐にわたる内容となっています。

このような業務の性質がありますので、いまのところ、後見業務の手続きがコンピューターにとって変わられる可能性は皆無ですね。

でも世の中そんなに単純ではありません

司法書士といえば登記業務ですが、これまで述べてきたことを見てしまうと、業務によってはオワコン化が進んでいるなあ・・と思ってしまう方がいるかもしれません。

ですが、私のような零細事務所も、なぜかしぶとく生き残っています。

太いお客さんがいるわけでもありません。なぜでしょうか?

かなりの情報をインターネットで得ることができるこの世の中で、みんながグーグル検索して調べ倒すのが得意でしたら、専門家は激減するかもしれませんが、まだそうはなっていません。

登記手続きや法律の細かいことを調べるヒマがあったら、そんなことは司法書士など専門家に任せて、自分は本業をがんばったほうが費用対効果が高い、そのように考える人も世の中にたくさんいます。

つまりそういうことです。言われているほど世の中すべてが効率化できるわけじゃないのです。

専門家の手伝いを必要としている人々は、まだまだ尽きないということです。

まとめ

会社の登記や企業法務の中でも契約書作成の中でも、難易度が比較的低いものから順にオワコン業務になっていくと想定されます。

不動産登記は、市場のパイが大きくなっていないという点では残念ですが、不動産取引の場面ではまだまだ司法書士の出番が求められることがほとんどですので、総合的にはオワコンとは言えないです。

これから司法書士業界に入っていく方でしたら、できれば登記だけに目を向けるのはもったいないです。

個人や企業相手に「法務コンサルティング」をするくらいの意気込みで、新境地を見つけた方がいいんじゃないかなあ、と思っています。

この記事を最後までご覧いただきましてありがとうございました。

関連リンク
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会社設立freee

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